政界再編を望む意見が国民の間でも広まりつつあるが、政界再編をする場合の基軸となり得る一つの理念が「保守」であるように思う。先の参院選でも、自民党、国民新党、たちあがれ日本、新党改革、日本創新党が保守を掲げていた。大躍進したみんなの党も保守派であり、保守に対するリベラル派が多勢を占める民主党内にも保守系の議員はいる。
だが、これだけの党や議員が保守を自認すると、国民はどの政党を支持すれば良いのか混乱するであろうし、事実、先の参院選では保守を抑えたみんなの党を除き、保守を前面に出した国民新党や3つの新党は議席を伸ばせなかった。
保守とは何なのだろうか。北海道大学准教授の中島岳志さんは朝日新聞への寄稿の中で「保守は人間の能力の限界を謙虚に受け止め、その不完全性を直視する。つまり懐疑主義的な人間観を保守は共有する」「不完全な人間が構成する社会は、必然的に不完全な存在であり続け、永遠に理想形態にたどり着くことはない」と解説する。
つまり、中島さんの文章を咀嚼し加筆すれば、人間には、いわゆる「悪」が存在し、そのような人間が形成しようとする理想社会は不完全であり、それよりも、国民が長年の歴史の中で培ってきた社会的制度や伝統、文化を守るという人智を超越したものを保守派は重視している―ということだろう。
中島さんはまた、締めの言葉として「日本の政治が目指すべきは、何よりもまず信頼の回復。そして、人々がこの国の将来に安心感を抱いて生きることができる環境の整備である。この方向性をしっかりと見据えた保守政党が、日本には必要だ」としている。
現在の保守を唱える代表格・自民党と、保守からリベラルまでを有する民主党に代わる、より保守色の濃い政党の誕生こそ、政治や国民生活の安定につながるのではないか―。現実味を帯びてきた政界再編の基軸に、保守思想がなることを期待したい。【山田貴之】
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