寺村さんは震災後の4月初めに、テレビで石巻の海に家具や家電が沈んでいる映像を見、その中にはピアノもあった。ピアノをこよなく愛する寺村さんは「1台でもいいから救いたい」との思いにかられ、被災地の楽器店に片っ端から電話をかけた。
そのうち、石巻で楽器店を経営する井上晃雄さん(82)と連絡がつき、寺村さん主催で今年6月26日に181種類の楽器でギネス記録を更新したイベントに参加しようと思っていたことや、寺村さんの祖父が植えた彦根城内の桜のパズルを持っていたことから意気投合。「復興第1号のピアノは県外に出した方が良い」との思いで、寺村さんに届けることになった。
井上さんの店も津波被害にあい、ピアノを初め、50種類前後の珍しい民俗楽器が流された。ピアノはその後、ボランティアなどの手によって海から引き上げられ、修理後の8月1日には復興と鎮魂を願って石巻市内で開かれた祭典に登場。その後も井上さんらによって弦の張り替えや防腐剤を塗る作業が行われたが、9月末の台風15号で一部が浸水する被害にもあい、再修理を経た10月4日に石巻を出立し、5日後の9日に寺村さん宅に届いた。送料や修理費は寺村さんが負担した。
最初にピアノを見た時、寺村さんは感動して涙が出たという。ピアノには傷跡も残っており、「あの震災のショックは決して忘れてはいけない。いつまでも大切に使っていきたい」と話している。
ピアノの公開は11月13日午後1時半~スミス記念堂で。自由に触ったり、弾くことができる。
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