2018年4月11日水曜日

日章旗を所有していた米国や英国の元兵士の家族らから県内の戦没者遺族に返還する式典、滋賀県護国神社で

 昭和の大戦時代に日本兵士が戦地に持参した日章旗を所有していた米国や英国の元兵士の家族らから、滋賀県内の3人の戦没者遺族に日章旗を返還する式典が5日、彦根市尾末町の滋賀県護国神社で開かれた。3枚の日章旗が同時に返還されるのは初めてだという。
 大戦時、日本の兵士たちには家族や友人、勤務先の同僚らが寄せ書きをした日章旗が贈られ、兵士たちは戦地に持参して肌身のそばに置いていた。一方、欧米で旗は敵か味方かを識別するためのツールで、敵の旗を戦利品として持ち帰ることは手柄とされ、日本人の兵士の日章旗も米国や英国などの兵士によって各国へ渡っていった。
 米国オレゴン州の非営利団体「OBON SOCIETY」は2009年5月から、日章旗を返還したい人と受け取りたい日本の遺族との橋渡し業務をしており、今年2月までに200枚以上の日章旗が返還されている。 護国神社での返還式には、戦没者の故・中嶋康平さん(東近江)の義理の子の昭治郎さん、故・中野義良さん(日野)のおいの良造さん、故・三宅孝雄さん(長浜)の弟の信雄さんら遺族や、中嶋さんの日章旗を所有していた英国のアンドレクレアさん・デボラさん夫妻、中野さんのを持っていた米国のジェニファートリップさん・ダラスさん夫妻ら、匿名者から三宅さんの日章旗を受け取った同団体共同代表のレックスジークさん・敬子さん夫妻が参加。
 この日は約300人が参加しての春季例大祭があり、その後に行われた返還式で滋賀県遺族会の岸田孝一会長は「日章旗が一度に3枚返ってくるのは貴重であり、これからも全国で返還式が行われるのを願っている」とあいさつ。米英のそれぞれの家族らから日本の遺族に日章旗が手渡された。ジェニファーさんは大伯父を戦争で亡くしていることから「家族を失う悲しみを私も知っている。過去の痛みや恨みは持ち続けるのではなく、友情の証しとして返還しに来ました」と語った。中野良造さんは「日章旗は仏壇にお供えするが、伯父も生まれた家に戻ってくることができ、喜ぶと思う。ほかの数多くの日章旗が遺族の元に戻るのを祈っている」と話した。
 立会人として三日月大造知事や返還式の実現に尽力した滋賀出身の有村治子参院議員らが祝辞を述べ、遺族がそれぞれの日章旗を持ちながら記念撮影に応じた。

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