裕子さんは彦根藩初代の直政について「とにかく戦いが強い人で、休みもなく大いに働いていたという印象。直政が最初に入った佐和山城からの眺めは、現代と比べて内湖がなく、芹川の場所も違っており、400年の歳月を感じる」と述べた。
二代の直孝については「すきが無く、強面の武将」というイメージだとしたうえで、ひこにゃん誕生の伝説にも登場するため、「怖い上司が猫の手招きでついて行ったのだから、家臣はびっくりしたのでは。人間味のある方だったと思う」と語った。
十三代の直弼については、政治家としては意見が分かれる一方で、茶人としては高く評価されている点にふれながら「家臣のほか、家族や奥女中を相手に茶の湯をしており、男女平等の最先端を歩んだ方だ」と解説。「気を休めることができたのが茶会で、趣味にも手を抜かなかった。今風に言えば、ワークライフバランスをうまくしていたのだろう」と説明した。
彦根藩に関する貴重な史料や美術品が、明治政府の処理や戦争、関東大震災、大洪水などで無くなったが、被害を逃れたり、直弼の側近だった大久保小膳や家来らが残したりしたことで、約4万5000点が彦根城博物館などに残っていると紹介。また裕子さんの祖父で元彦根市長の直愛さんと祖母の文子さんが井伊家の文化財を市へ寄付したことについて「彦根の財産として研究してもらおうという思いがあったのでは」「明治時代以降の近代の文書もあり、お浜御殿などの整備を含めて、彦根の宝物を大切にしていただきたい。研究が進むことも願っています」と締めくくった。
裕子さんの講演会は彦根城博物館友の会(川嶌順次郎会長)が主催し、87人が来場した。
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