2023年2月12日日曜日

彦根商工会議所の新会頭・滋賀中央信用金庫理事長の沼尾護氏インタビュー

 彦根商工会議所の新しい会頭に昨年11月、滋賀中央信用金庫理事長の沼尾護氏(70)=高宮町=が就任した。本紙のインタビューに沼尾新会頭は、彦根市や彦根観光協会との連携強化、彦根商議所職員の意識改革などに注力する考えを示した。    (聞き手・山田貴之)
 
「小出路線」の引き継ぎは?
近江ツーリズムを「儲ける団体に」
 
 ―前任の小出英樹さんはそれまでの会頭像にはなかった変革的な展開を行い、教育や観光など商工関係以外の分野にも独自路線を貫かれたが
 沼尾 観光に関しては彦根にとって一つの産業であり、私も継続して進めたい。滋賀県と彦根市が目指している彦根城の世界遺産登録も観光にとっては大きな味方になる。
 ―「小出路線」をどのように引き継ぐか
 沼尾 観光業では小出前会頭が設立した一般社団法人近江ツーリズムボード(略称・OTB)があり、私もそれを引き継ぐが、彦根観光協会ともっと一体となって、彦根が儲(もう)かるような土壌を作りたい。ОTBが活躍する分野はインバウンド(外国人観光客)を呼び込むことであり、そのために具体的な案を練って進めていかなければならない。また彦根だけよりも5市4町(彦根・長浜・米原・近江八幡・東近江・犬上郡・愛荘町)といった広域で連携してインバウンドを呼び込む方法を考えたい。ОTBが寄付だけでなく、自らでお金を作り出せる団体にならないと、サスティナブル(持続可能)な団体にはならない。
 
インバウンド強化に向け
「敦賀や5市4町と広域で」
 
 ―各市町にも観光協会があるため、事業内容が重なることも考えられるが
 沼尾 上手に連携していけばやれるはず。5市4町で組織している「世界遺産でつながるまちづくりコンソーシアム」が歴史を学ぶ「ヒストリア講座」を開講しているが、今後は各市町の観光協会や行政ともっと連携しないとダメでしょうね。
 ―連携の具体的な内容は
 沼尾 5市4町と真剣に考えていく。万が一、彦根城の世界遺産登録が実現できない場合でも各市町の観光協会やОTBは存続するため、どうしたら良いのかについて意見を交わしていきたい。
 ―その観点からすると、観光で先進的な長浜との連携を深める必要があるが
 沼尾 もっと言えば、福井県敦賀市にまで広げても良い。敦賀港にはコロナ前、大型の客船が入港し、富裕層の外国人が入国していた。それも復活すると思うため、インバウンドの考えからすれば大きなメリットになる。
 
「親身に」相談できる体制を
商議所職員の意識改革「訴える」
 
 ―彦根商議所の会員をはじめ、中小零細企業に対する取り組みは
 沼尾 会頭になって一番、思っていることは会員もしくは労働者のために何ができるのか。短期的にはお客様(会員もしくは労働者)がDXを導入したい、補助金を受けたいなどの時に親身になって相談できる体制を最優先に整えたい。ウクライナでの戦争を受けて、日本国内ではエネルギー価格や物価が高騰し、円安になっている。この三重苦で苦しんでいる企業からの相談に応じたい。会員や労働者を第一に思うことが最優先。
 ―今の相談体制との違いは
 沼尾 彦根商議所の相談員の考え方、あり方について、職員の前で説いていきたい。「クレド」という言葉があるが、これは企業で言えば信条の意味。商工会議所のクレドとは何かを考えた場合、それは会員と労働者を大事にするということであり、喜んでもらうということ。それらが商工会議所の職員にとってのクレドだということを教えたい。彦根商議所の職員には通り一辺倒ではなく、懇切丁寧に相談に応じることに、もっと専念してほしい。会員や労働者は職員にとってのお客さまであるということを切実に訴えていきたい。
 
座右の銘は「不易流行」
女性の創業支援セミナー実施へ
 
 ―不易流行が座右の銘とのことですが
 沼尾 不易は変えてはならないことであり、会社で言えば理念を指す。しかしこの理念を貫くためには新しい風、流行も必要になる。不易だけだと精神論的になるし、流行を追い過ぎてもいけない。バランスが重要だと言える。
 ―不易の部分は彦根商議所で言えばどの部分か
 沼尾 彦根に住んでいる方の幸せを追求したい。市民が幸せになるには働く場所が必要になる。彦根商議所としてどのように働く場所を維持するか、これが流行にも繋がっていく。お金を稼いで、街が潤い、インフラが整って、住みやすくなれば幸せにもつながる。不易を達成するために、どのような流行をする必要があるのかをこれから考えたい。
 ―流行の部分での構想は
 沼尾 まずは企業の数を減らさないこと。創業者を支援するために創業支援セミナーをもっと充実させたい。女性だけに絞ってのセミナーも一案にある。創業して、会社が成長していく過程で彦根商議所として何ができるのか、副業支援や人材のあっせんについても積極的に進めたい。
 ―学生に対しては
 沼尾 創業支援の一環として、滋賀中央信用金庫が学生を対象に地域課題の解決案を募る「アイデアコンテスト」を開催してきたが、今後は彦根市を巻き込めば、もう少し大規模にできるはずだ。
 
企業誘致「市と進める」
DXやeスポーツも「支援」
 
 ―彦根商議所は彦根城の世界遺産登録に向けた取り組みも熱心だが、それでも市民の機運醸成はまだまだ。
 沼尾 その辺りは継続して、機運醸成を図りたい。
 ―和田裕行市長と安藤博副市長は沼尾会頭と同じ高宮居住。行政との絡みは
 沼尾 学生のアイデアコンテスト、DX、企業誘致、都市計画の面でもう少し彦根商議所としても連携できればと考えている。eスポーツについても支援したい。いずれにしても彦根観光協会、彦根商議所、彦根市が一体となって、街の活性化に進んでいくことが大事。
 ―会頭としてやりたいことは
 沼尾 彦根商議所内には7つほど部会があるが、部会の声をもっと取り上げたい。住みよいまちづくりをキーワードに、人口がそこそこいて、教育やインフラも整って、子育てがしやすい街になるよう貢献したい。特に人口を増やすことは彦根商議所の仕事でもある。

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