衆院選は民主党の圧勝に終わり、国民は「信用できない」自民党よりも、「頼りない」民主党を選んだわけだ。しかし、国民の多くは必ずしも民主党を支持したのではなく、ただ単に、政官癒着構造が蔓延り、総裁や閣僚の不遜な態度が続いた自民党政権に、三行半を突きつけたのであろう。
傷口に塩を塗り込むのは小生の性に合わぬため、政権を担うことになる民主党が、なぜ新聞やテレビで「頼りない」と揶揄されるのかを以下、列挙する。
民主党は、旧社会党や自民党に所属していた議員で組織されているのは周知の事実だが、この寄り合い所帯が故に、この党の安全保障や外交、さらには国家観が懸念される。
衆院選の公示前には、鹿児島県の集会で民主党議員の後援会が国旗を切り裂いて党旗にするという「事件」を起こした。民主党の支持団体で国旗の掲揚や国歌の斉唱を反対する日教組による愚策とも勘ぐることができるが、国旗は国と国民が一体であると表す象徴であり、思想的相違を超えて敬意を表するのが一国民としての務めといえよう。
民主党のマニフェストに関しては、「バラマキ」や「社会主義的政策」と評される「子ども手当」や「高速道路の無料化」、「農業の個別補償制度」などは、甘いニンジンへの食いつきを狙った民主党の思惑とは違い、国民の評価は必ずしも高くない。国民が「意外にも」冷静な判断をしている理由は、財源への懸念などが挙げられよう。
例えば、高速道路の無料化について、首都と阪神の両高速道路を除いて無料化にした場合、朝日新聞によると、年約2兆円の収入が途絶え、道路会社の借金約30兆円を税金で肩代わりする必要があるという。ほかにも、渋滞増による運送会社への打撃、鉄道やフェリー業界への悪影響、高速道路の整備・維持管理費への財源不足などの問題がある。さらに環境保全の視点から、温室効果ガスの排出が少ない乗り物の利用を促す「モータルシフト」の世界的な潮流にも逆行する。
外交・安全保障においては、マニフェストで「東アジア共同体の構築をめざし、アジア外交を強化する」「日米地位協定の改定を提起し在日米軍基地のあり方を見直す」などと列記し、中国との関係強化と米国依存からの脱却を主張している。
しかし、中国は民族浄化を企み、人権を蹂躙し、民主化の活動・報道の自由を許さぬ全体主義国家である。価値観や思想的に異なる国と、いかに「共同体」を締結するというのか。また国防強化の政策を示さず、どのように米国からの独立を図ろうとするのか。絵に描いた餅である。 民主党は、国民の多くが「頼りない」と思っていることを自覚すると共に、必ずしも党の政策を(国民が)評価したのではないという前提の基で政権運営を担うべきであり、大局的視点に立ち、抜本的な見直しを恐れぬ姿勢も必要である。そうでないならば、「政界再編」の波が押し寄せるのは、そう遠くはないであろう。 (山田貴之)
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