2017年4月27日木曜日

市長選の分析

 ※解説=今回の市長選の注目点は現職に対する批判票が信任票を上回った点と、田原氏への予想以上の支持である。
 大久保氏は前回の市長選では1万6903票を獲得し、当時の現職に7000票以上の差を付けての圧勝だった。今回も知名度で劣る新人2人が相手だったため、再び圧勝を予測する声があったが、結果は前回よりも票を減らした上、批判票は信任票より大きく上回った。
 この原因は市役所本庁舎の耐震化などを巡る市政の混乱、次期市政における大規模事業の先行きへの不安、有力な支援者との癒着に対する危惧、民進党色が強いことへの嫌悪感などがある。
 これら次期市政への懸念は次号のコラムで論じる予定だが、大久保氏は批判票を真摯に受け止め、大規模事業をはじめ、見直すべき事項は計画を改める必要がある。市長選で対抗馬の前川氏を支持した市議が約10人いることからも、市議会が計画通りに承認するとも思えない。
 そして、もう一つの注目点は田原氏の得票である。議員の支援を受けない同級生を中心にした選挙戦は苦戦が予想されたが、8000票を超えるという大健闘だった。この原因としては、▽降雨の中で街頭演説をするなど公示前からこまめに活動してきた▽対現職の政策をわかりやすく率直に論じていた―ことなどがあるが、マスコミや他陣営を驚かせた得票で、選挙は組織だけではないことを改めて認識させられた。       (山田)

2017年4月26日水曜日

現職の大久保貴氏が新人2人破り再選も「批判票」は「信任票」上回る

 彦根市長選は23日、投開票が行われ、現職の大久保貴氏(53)が1万5311票を獲得し、新人で前市教育長の前川恒廣氏(61)、新人で元毎日放送記者の田原達雄氏(68)を破り、再選を果たした。しかし、現職が獲得した「信任票」と新人2人を足した「批判票」を比べると、批判票が4165票も上回っており、市民は必ずしも現市政を評価したとは言えない結果になった。
 市長選は当初、争点なき選挙と言われていたが、本紙をはじめマスコミ各紙が次期市政で相次ぐ大規模事業を特集記事として取り上げると、告示前後から争点化し始め、論点の中心になった。
 特に平成36年に開催される滋賀国体では主会場が彦根になるため、新しい市民体育センターの整備費(約60億円)を含む関連費用約100億円を計画通り進めるのか否かで、現職と新人2人の意見が分かれた。
 大規模事業について、大久保氏は「やりくり算段して、計画通り着実に進める」とし、前川氏と田原氏は市の財政が厳しいとして「計画の見直し」を主張。また新人2人の陣営からは「現職には有力な人が付いており、利権が絡む恐れがある」と牽制する声も頻繁に聞かれた。
 選挙戦ではこの大規模事業を中心に、稲枝地域の振興策、教育・子育て問題なども取り上げられ、3氏がそれぞれの主張を展開したが、連合滋賀の推薦を受け、民進党の国会議員、県議、市議、自民党の国会議員、県議、市議からも支持を得た大久保氏が知名度と組織力で序盤から有利な選挙戦を展開。中盤以降、新人2人の追い上げを受けたが、次点に4465票差を付けて勝利した。
 前川氏は自民党の国会議員、県議、市議、公明党の市議、民進系の市議が付き、市民体育センターの計画見直し、教育・子育て支援の充実、経済振興などを唱えて猛追したが、勝利には至らなかった。選挙後、前川氏は本紙の取材に「多くの市民の皆さんに訴えが浸透できなかったのは残念だ。保守票が割れてしまったことや候補者を一本化できなかったことも影響したと思う」と語っていた。
 田原氏は議員の応援がなく、同級生を中心にした草の根の選挙戦を展開。市の財政問題、中学3年生までの医療費無料化、稲枝地域の振興などを訴え、最下位に終わったが、健闘した。選挙後、田原氏は「予想以上に得票が少なかった。厳しい選挙戦だった」と振り返り、告示前に持ち上がった前川氏との一本化については「一本化しても現職に勝てるとは思わなかった。今もその判断は間違っていないと思っている」と話していた。
「チャンス生かし強い彦根に」
 午後10時ごろ、びわ湖放送で当確の報道が出ると、西今町の選挙事務所内の広間に大久保氏が国会議員や県内の首長、支持者から拍手と歓声を受けながら登場。
 万歳をした後、大久保氏は滋賀国体にふれ「間に合うように県と協力していきたい」とし、対立陣営が指摘してきた財政面については「彦根の財政は極めて健全。市民からは心配する声もあり、説明不足だと思っている。まちづくりの大きなチャンスであり、そのチャンスを生かしていきたい。真の意味での強い彦根を作っていきたい」と語った。
 また翌日の24日には市長選の当選証書の付与式が市役所5階であり、市選管の小川良紘委員長から大久保氏に証書が渡された。式後、記者陣に大久保氏は選挙戦の感想などを語った。
 選挙戦を振り返っての問いに大久保氏は「市の財政状況を市民の皆さんに理解して頂く作業が十分でなかったと思っている。ほかの候補者がおっしゃった財政危機の文言に市民が反応されたこともあった。色々と考えさせられた選挙だった」と述べた。
 次期市政で相次ぐ大規模事業については「予算的なことよりも難度が高い事業が重なると理解しており、それを乗り越えるために頑張っていきたい」とし、そのうち図書館整備については「用地の選定をどういう手法でするのか、時間がかかる可能性があるが、最善を尽くしたい」と説明。
 最後に、市民に向けては「継続して頑張れとの審判を頂いた。持てる力をすべて出し切って実績をあげる4年間にしたい」と話した。

2017年4月22日土曜日

彦根市長選あす23日投開票

 彦根市長選はあす23日、投開票を迎える。出馬しているのは、現職の大久保貴候補(53)、新人で元毎日放送記者の田原達雄候補(68)、新人で前市教育長の前川恒廣候補(61)。争点となった大規模事業を中心に、3候補はきょう22日、最後の訴えを行う。
 大久保候補は知名度と組織力を生かし、個人演説会では国会議員や県議、経済界の重鎮らの応援を得ながら、会場をほぼ満員にする勢いで選挙戦を展開。4年間の実績をPRしながら、大規模事業について「着実に前に進める」と訴えてきた。22日は市内一円をこまめに回るといい、選対本部長の植田洋一さんは「現職優勢との報道があるが、実感しておらず、大激戦だと感じている」と話している。
 田原候補は議員ら組織の支援無しで、同級生を中心にした「雑草軍団」(陣営)で草の根の選挙戦をしてきた。「現市政の財政は危機的だ」と各事業の見直しを求めてきた。22日は市内全域に街宣車を走らせて、ベルロードを桃太郎作戦する予定。選対本部長の郡田等さんは「組織や利益集団、議員の支援がない孤立無援の戦いで非常に厳しい選挙戦だ」と語っている。
 前川候補は現職に対抗する議員の支持を得て、大手企業や市教育長での実績をアピールしながら「事業を見直した財源を教育や福祉にあてる」と語ってきた。22日は午前に稲枝・河瀬地区、午後に南彦根・彦根エリアを回り、午後5時~四番町ダイニング、同6時~中地区公民館で個人演説会。選対本部長の杉原祥浩市議は「支持の声は日に日に増している。やり残したことがないように最後の1日、訴えたい」と話していた。

2017年4月20日木曜日

彦根市長選、現職追う新人2人

 彦根市長選が16日告示され、現職の大久保貴候補(53)、新人で元毎日放送記者の田原達雄候補(68)、前市教育長の前川恒廣候補(61)が出馬。23日の投票まで熱い選挙戦が繰り広げられる。序盤戦を終えて、大久保候補を前川候補と田原候補が追っている情勢だ。
 今回の市長選は国体関連予算を中心に、図書館整備、広域ごみ処理施設など、今後予定されている大規模事業に対して、現職と新人で意見が異なり、争点化しつつある。
 大久保候補は「彦根は分岐点にある」「やりくり算段して、着実に進めていく」と述べるなど、各事業を計画通り進める意向だ。一方で田原候補は「市の財政は危機的な状況だ」とし、前川候補は「見直した財政を教育や福祉に回す」と計画を見直す考えを示しつつ、ひこね燦ぱれす周辺に建築予定の新しい市民体育センターを違う場所にする意向を示している。
 ほかの主な政策として、大久保候補は「図書館は彦愛犬の拠点として整備していく」「稲枝駅西口から県道2号線までの開発を進めたい」と説明。田原候補は「中学3年生までの医療費の無料化」「稲枝西口への図書館整備」を主張。前川候補は中学3年生までの医療費無料化のほか、「滋賀大のデータサイエンス学部の活用」「稲枝駅西口の整備」をあげている。
 大久保候補には民進党の田島一成衆院議員、中沢啓子県議、同党系の市議6人のほか、自民党の細江正人県議、大野和三郎県議(犬上郡)、市議数人が支援し、連合滋賀が推薦。知名度と組織力で他陣営に勝り、有利な戦いを見せている。
 前川候補には自民党の西村久子県議、自民または保守系、民進系、公明党の市議9人程度が応援。当初は現職のみの支持の可能性もあった自民党の上野賢一郎衆院議員が、前川候補の出陣式で応援演説をしたことで、同陣営に勢いがついており、現職を猛追している。
 田原候補は議員が付かない状況で、同級生を中心に「草の根」の選挙戦を展開しているが、厳しい戦いが続く。
 なお、選挙人名簿の登録者数は15日時点で9万1377人。

大野県議の集会に現職参加

 「彦根市大野和三郎を育てる会」は、市長選告示日の16日夜に、ひこね燦ぱれすで国政県政報告会を開き、大野県議が支援する大久保候補も「ゲスト」として参加した。
 報告会の冒頭、大野県議は「滋賀は南高北低で、湖東地域はインフラ整備が遅れている。そんな中で国体の主会場が彦根に決まった。大久保さんでなければ彦根に誘致できなかった」と持ち上げた上で「外町の交差点の渋滞を解消させて、多賀のスマートインターチェンジを整備すれば、彦根城、多賀大社、湖東三山に今より多くの観光客が訪れる」と解説。「この地域の経済を活性化させることで財政面も良くなり、その財政を教育や福祉に回せる」と語った。
 自民党の小鑓隆史参院議員、上野賢一郎衆院議員、二之湯武史参院議員も大久保候補への支持を求める演説をした後、大久保候補が登壇。「何年も動かなかった国道8号線バイパスを進めようとして頂いている。平成36年の国体はチャンスであり、都市基盤の整備を着実に進めていきたい」「福祉や教育の面もできることからやってきた。財政は良くなっており、貯金も増えている。政策を遂行できると自信を持っている」と述べ、ガンバローコールで締めくくった。
◆メモ帳
 彦根市長選告示前の13日夜に、市内の葛籠町公民館で「図書館整備についての意見交換会」があり、現職市長の大久保氏と大野県議が答弁者として参加した◆図書館について現市政は、中央館を河瀬・亀山学区に整備する計画であるため、同学区に位置する葛籠町、犬方町、法士町、出町の4自治会が意見交換会を企画。地元住民100人ほどが参加した◆大久保氏は図書館の整備計画や4年間の実績をアピールして退席し、中盤以降は住民の質問に大野県議が答える形式となり、彦根市の財政面にゆとりがあることを強調しながら、大久保氏への支持を求めていた◆この意見交換会を傍聴して違和感を抱いたのは、大久保氏と大野県議の「蜜月ぶり」よりも、ほかの彦根の県議3人は何をしているのか、という疑問である◆地元住民によると、中山道の交差点の危険個所について、大野県議に立ち合いを求めて、行政側と交渉にあたってもらっているという。確かに県議会の選挙区は前回の選挙から彦根市と犬上郡が一つになり、大野県議が彦根のために尽力するのは理解できるが、彦根選出の県議にはもう少し市民に頼られる存在になって頂きたいと思う今日この頃だ。     (山田)

彦根市長選3候補が第一声

 16日に告示された彦根市長選に出馬した3候補の出発式での第一声は以下の通り。
 大久保候補は地元の三津屋町で出発式を開いた後、パリヤ前で約300人を前に出陣式。「未熟な市長だったが、皆さんのお陰でつつがなく市政を運営することできた」と4年間を振り返った上で、「彦根は日本のど真ん中に位置する中で、我々が成し遂げることは何か。安心できる地域社会を築くために、福祉モデル都市を目指して進んでいこうという思いに変わりはない。健康長寿のまちを作るというのが私に求められた役割」と語った。
 また、子どもの貧困や学力向上など教育・子育て施策と、インフラなど都市基盤の整備の充実を進める考えを示した上で「県や国の協力を得て少しずつ彦根は変わりつつある。大きな流れを作り上げていきたい」と述べた。上野賢一郎衆院議員、田島一成衆院議員らが応援演説を行った。
 田原候補は銀座商店街の事務所前で約80人を前に「大久保市政の再選を阻止する」と第一声。「大久保市政は頼りない、任せておけないという不満が彦根の中に広く深く浸透している」と危機感を訴えた。そのうえで、財政健全化による財源確保や、新しい人事評価制度の導入で「市役所に対する市民の信頼を回復させたい」と呼びかけた。また「経済団体、ボランティア団体などいろんな団体と市長自らが友好的な関係を取り戻し、彦根市全体に本来のチームワークを取り戻したい」と語った。新人候補一本化の提案についても触れ「きっぱりと断った。前川さんに一本化しても勝てる見込みがないから」と振り返り、「どんどん目立てば私にも勝機がある。1週間しっかり頑張りたい」と決意を語った。同級生で長久寺住職の松山貞邦氏らが応援演説を行い、選対本部長の郡田等氏の合図で「ガンバロー」と気勢を上げた。
 前川候補は平田町の選挙事務所で約200人を前に第一声。約100億円に上る国体関連予算を見直す考えを示した上で「彦根の将来、未来につながる政策に振り向けていくのが私の役割。過去の4年間よりもこれからの4年間の彦根を導きたい思いだ」と意気込んだ。
 また民間企業や教育長の実績を示しながら「児童生徒の学力を向上させ、ハンディキャップのある子どもたちへの支援もしていきたい。民間企業で培った力でしっかりとした経営をしていき、地域振興を成し遂げたい」と説明。最後には再び新しい市民体育センターの整備方針を見直す方針を示しながら「ハンディキャップのある人たちが集える施設を作りたい」と述べた。上野賢一郎衆院議員や中村善一郎元県議、市議らが応援演説を行った。

2017年4月18日火曜日

彦根城の世界遺産 実現できる?

 彦根城の世界遺産登録についてはここ近年の市長選で、毎度のごとく市政課題の一つに取り上げられ、その後の市政において登録に向けた施策を進めてきたが、その実現のめどは見えていない。また市民の中には既にあきらめモードさえ漂っており、盛り上がりもいまいちだ。そんな中ではたして世界遺産登録は実現できるのだろうか。
 前市長の時代は、▽城内や大名屋敷など特別史跡内を「コアゾーン」に、旧城下町を「バッファゾーン」に分けて登録を目指す単独案▽松本城、犬山城、すでに世界遺産になっている姫路城との国宝四城(当時)案を中心に進められてきた。
 しかし現市政は国宝案を外し、特別史跡内のコアゾーンに焦点を絞った形で進めてきたが、平成28年度には城下の物件を加える形に変遷。3月末には特別史跡と、辻番所、井伊神社、外堀土塁など城下の5件を含めた「城を中心に発展した江戸時代の都市構造」をコンセプトにした準備状況報告書を文化庁に提出した。
 今後、井伊家ゆかりの寺や藩校、武家屋敷、お浜御殿などが追加されることも考えられるが、彦根城世界遺産登録推進課の担当者は「国の重要文化財クラスを中心に世界遺産の登録候補物件に加える場合もあるが、逆に外していくこともあり、最終的には5件前後になるのでは」としている。
 市は今年度から2、3年かけて推薦書原案を作成し、並行して学術検討委員会で協議をするなどして、平成33年度までには国内推薦を受けて、同36年度までに世界遺産登録を目指す意向だ。
 しかし、世界遺産登録のネックになっている姫路城や世界のほかの城郭との差別化が図れるのかは未知数である。しかも肝心の市民の盛り上がりは皆無に等しく、市がどれだけ啓発しても響かないのが現実だ。彦根城の世界遺産登録の前途はまだまだ厳しいと言えよう。【山田貴之】

カナダで結成された日系人たちの野球チーム「バンクーバー朝日軍」会長だった松宮外次郎の孫にあたる松宮哲さん本「松宮商店とバンクーバー朝日軍―カナダ移民の歴史―」発刊

 大正時代にカナダのバンクーバーで結成された日系人たちの野球チーム「バンクーバー朝日軍」(以下朝日軍)の会長だった松宮外次郎の孫にあたる松宮哲さん(69)=開出今町=が、朝日軍などカナダ移民をまとめた本「松宮商店とバンクーバー朝日軍―カナダ移民の歴史―」を発刊。将来の歴史館の創設を願って、希望者には無料で渡している。
 松宮さんによると、外次郎は24歳の時の明治28年(1895)に初めてカナダに渡って以降、帰国と渡航を繰り返し、3回目に渡航した明治38年の時にバンクーバーのパウエル街で食料品を扱う松宮商店を開業。その後、和洋雑貨や運送なども手がけ、バンクーバー市商業組合会頭も務めた。
 そんな際に野球チーム設立の機運が高まり、開出今出身の宮崎伊八の提唱で大正4年(1915)に朝日軍が結成されて現地の白人リーグに加入。結成当時のメンバーには、北川初太郎、堀居由太郎、北川英三郎(以上3兄弟)、松宮惣太郎、西崎与惣松ら開出今出身者がおり、在留邦人でも英雄視されていた。太平洋戦争が勃発する昭和16年までの約25年間、現地で白人たちのチームと対戦し続け、在留邦人を楽しませたほか、その後の日加親善にも貢献。平成15年にはカナダ野球殿堂入りを果たしており、時銘板には74人が刻まれている。
 平成26年秋に映画「バンクーバーの朝日」が上映されたのを機に、松宮さんは朝日軍について調べ始め、滋賀彦根新聞をはじめとするマスコミを通じて約2年間、情報を収集してきた。
 本は2部構成で、第1部の「松宮外次郎が生きた時代」では外次郎ら彦根をはじめ湖東地域の人々がカナダに渡った経緯やバンクーバー市のパウエル街での生活を紹介。カナダでの商売の様子や、現地人による排斥(バンクーバー暴動)などについて説明している。
 第2部の「バンクーバー朝日軍の歩み」では、当時現地で発行されていた日系人向けの新聞「大陸日報」の記事を中心に、小学生のチームに負けた最初のころから、リーグ優勝するまでの朝日軍の成長ぶりを解説している。
 松宮さんは「朝日軍の歴史が記憶遺産として残していけるよう、この本が博物館などの建設の動きが立ち上がるきっかけになることを期待しています」と話していた。
 本はB5判、248ページ。500部発行。問い合わせは松宮さん☎090(9878)4193。

地域課題の解決に貢献していく研究拠点「地域ひと・モノ・未来情報研究センター」滋賀県立大学工学部に設置

 農業や観光、看護などの分野の地域課題の解決に貢献していく研究拠点「地域ひと・モノ・未来情報研究センター」が1日、彦根市八坂町の滋賀県立大学工学部に設置。同日、工学部で銘板の除幕式が開かれた=写真。
 県立大では平成27年秋から、工学部内のICT(情報通信技術)を活用してさまざまな分野の課題解決に貢献していく拠点作りが学内で行われていた。同センターでは環境、健康福祉、観光のいわゆる3Kをテーマに、各分野の多様な情報をICTによって解析、共有化して課題の解決を図る「滋賀モデル」を構築し、全国への発信も目指す。
 具体的には、熟練農業者の作業経験のデータベース化など「農業」、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を用いた新たな情報の提供など「観光」、タブレット端末を利用した訪問看護の効率化など「看護」の研究を進める。
 同センターでは工学部のほか、環境科学部、人間文化学部、人間看護学部の計4学部が連携して進めていくため、除幕式でセンター長の酒井道教授は「4学部すべてが横断的に取り組むシステムで、農業、観光、看護の分野の課題研究に努めたい。滋賀県や民間企業との連携も図っていきたい」と述べた。
 5月末には県立大の交流センターで同センターを設立した記念のシンポジウムを開催する。

荒神山の森林伐採問題で、市が設置したガードレールの費用を伐採した者に支払わせるよう求め住民監査請求

 彦根市日夏町の荒神山東側の森林が約8450平方㍍にわたって伐採された問題で、伐採後に市が設置したガードレールの費用約587万円を伐採した者に支払わせるよう求めた住民監査請求が5日、行われた。
 本紙では昨年1月27日付でこの問題を報じた。彦根市は土地の所有者から平成26年8月27日に太陽光パネルの設置申請を受けて、関連条例に基づき9月5日に許可。県も平成27年8月中旬の「獣害対策」としての森林伐採の申請に対して認可している。その後、伐採が始まったが、予定エリアのうち約3000平方㍍が他人の土地だったことが判明。林道近くにも及んでいたため、同27年度から同28年度にかけて林道沿いにガードレールが設置された。
 請求書では「樹木の伐採で林道の強度が確保されなくなった。また樹木がなくなったことで、道路の形状の予測がつきにくい危ない林道になった」「伐採行為を原因として、それまで不要だったガードレールが林道の安全性を確保するために必要となったのは明白だ」と指摘。土地の所有者か伐採した者に対して、ガードレールの設置費用の負担を命じるよう求めている。
 この問題については山内善男議員が昨年の2月議会で取り上げ、業者に責任を負わせるよう求めた質問に対し、市は「業者への聞き取りでは錯誤による伐採で、国の指針に基づいても罰則にあたらない」と答え、大久保市長も「当該地を見たが、心痛む光景だった。植林をして頂くことで風致が回復するのを見守りたい」と答弁している。

2017年4月16日日曜日

図書館整備は最小限で

 彦根市には尾末町に市立図書館があるが、市が今年3月に策定した図書館整備基本計画では、拠点になる「中央館」を河瀬か亀山学区に、「地域館」として現図書館を北部館に、稲枝に南部館を創設し、新しい市民体育センター内に予約の貸し出しと返却のみのサービスポイントを設置するとしている。
 つまり現在の1館体制から、彦根、南彦根、河瀬、稲枝の市内4駅ごとの3館プラス1館体制に増やしていく計画だ。図書館を増やす理由としては、▽図書収容能力40万冊に対して77万冊以上あり、キャパをオーバーしている▽彦根市の南部地区の利用率が低くなっている▽全国の同一規模の自治体の多くが3館体制になっている―ことなどがある。
 だが、今後さまざまな大規模事業が続く彦根市で、3館プラス1をスムーズに整備できるだろうか。また中央館は本来、新しい市民体育センターが建てられる予定の南彦根駅前のエリアへの整備が有力視されていた。
 一部の市議らの間では「中央館の位置を南彦根駅前にし、新しい市民体育センターの建設地を再検討するべきだ」との意見がある。また財政面から、北部館においては最低限の改築のみで、南部館も稲部遺跡を絡めた資料館的な役割で遺跡周辺に建設するのが最善との声もある。
 今回の図書館整備には彦愛犬の湖東定住自立圏との兼ね合いもあり、中央館を1市4町の「拠点」にしたい考えがあるようだ。しかし多賀や愛荘など各町にはすでに市レベルの立派な図書館があることから、「拠点」にこだわるべきか、今後の議論の余地がある。
 図書館整備に関しては、中央館と南部館の建設予定地、総経費、完成時期が未定である。次期市長はすぐに建設地を決め、早急かつ財政支出を極力抑える工法で各図書館を整備するべきだ。【山田貴之】

彦根市長選の公開討論会、立候補予定者3氏が大規模事業や稲枝地区の振興策などで議論

 彦根市長選の公開討論会が9日、ビバシティホールで開かれ、立候補を予定している元毎日放送記者の田原達雄氏(68)、前市教育長の前川恒廣氏(61)、現職の大久保貴氏(53)が大規模事業や稲枝地区の振興策などについて討論した。
 現市政への評価について、前川氏は次期市政で大規模事業が続く点にふれながら「現在の財政状況ではやっていけない。ストップをかけて事業を見直して、教育や福祉に回す必要がある。私には国とのパイプもある」と述べた。
 大久保氏は「彦根は魅力のあるまちであり、市民の皆さんの理解と協力によって4年間、市長を担ってきた。人口減少の中で、彦根は人口が増えている。彦根が注目されているということを理解して頂きたい」と語った。
 田原氏は「市の財政は危機的だと思っている。今年度予算は市長選を控えて、あらゆる方面に予算措置をして過去最大規模になった。県知事と市町首長との会議でも発言しないのはどういうことか」と話した。
 観光については、田原氏が「彦根城内に土産店を作りたい。佐和山城跡には鳥居本からのルートを整備したい。博物館には貴重な文化財が多くあるため、彦根以外で展示するアウトバウンドの戦略を立案したい。観光協会は市と相互依存体質のため、民間活力で自立した組織にしたい」と説明。
 前川氏は「彦根城の世界遺産は今のままでは難しい。築城410年祭の目標は90万人らしいが、私なら(おおよその平均)70万人の2倍にできる。滞在型観光も進んでいない。発進力が欠けているのが原因であり、イベント(ゆるキャラまつり)が午後3時に終わるのもおかしい」と解説。
 大久保氏は「ひこにゃんと一緒に台湾やイギリスを訪れ、彦根をアピールしてきた。彦根城が世界遺産になれば多くの外国人も訪れるが、(登録までの)宿題は姫路城との差別化と世界の城郭との違い。平成33年度に推薦書を作成し、36年度の登録を目指す。市民に知って頂けるよう議論を深めたい」と述べた。
 討論の場面では田原氏の「この4年間を自己採点するならば」の質問に、大久保氏は「約束事は十分ではないかもしれないが、できたと思っている。全国一の福祉モデル都市には道半ばであるため、市民の審判を仰ぎたい」と回答。
 前川氏は、今年1月に市が発表した中期財政計画に広域ごみ処理施設や図書館などの整備費が入っていない点を疑問視。これに対し大久保氏は「用地がまだ決まっていない中で財政計画に入れるのは技術的に難しい」と返答。また田原氏は「現職には有力な方が付いており、その人の意向で財政出動される懸念がある。影響力の出ない市政が必要だ」と述べ、前川氏も「有力な方とは誰か」と迫った。これに対し大久保氏は「国体関連の事業で皆さん大変苦労している。国や県の支援を頂いて、市政を進めたい」と明確な回答を控えた。
 討論会後、来場していた岡田明穂さん(19)は「候補予定者の方の考えの違いが少し把握できた。予定者の皆さんには地域を活性化するための政策を訴えてほしい」と話していた。市長選の討論会は彦根青年会議所が主催し、市民141人が来場した。

2017年4月13日木曜日

彦根市長選を前に、滋賀彦根新聞とエフエムひこねが立候補予定者3人にインタビュー

 16日告示・23日投票の彦根市長選を前に、滋賀彦根新聞とエフエムひこねは立候補予定者3人にインタビューを行った。立候補予定者は出馬表明順に、元毎日放送記者の田原達雄氏(68)、前市教育長の前川恒廣氏(61)、現職の大久保貴氏(53)。
 インタビュアーは市男女共同参画センター長の土川慶子さん、エフエム彦根の小幡善彦社長、本紙編集長の山田貴之が務め、大規模事業における財政面や稲枝地域の振興策、子どもの貧困対策などについて聞いた。
 田原氏は、子どもの頃と比べた現状について「繁栄している映像がくっきりと残っており、繊維業をはじめ廃れていった現状との落差を感じる。現市政は観光行政の傾向が強い。市民生活や住みよい環境作りにしっかりとした目を向けないといけない」と説明。
 主な政策については「人口減少の中で、若い世代にどれだけ移り住んでもらって彦根を活性化できるかが大事。その1つが中学3年生までの医療費を無料化にすること。事業計画を徹底的に見直して財政を健全化して、財源を捻出しながら医療費・通院費の無料化をしていきたい」と語った。
 図書館整備については稲枝駅西口に小ぶりの南部図書館を整備したい。図書館協議会では中央図書館の新設を求める意見が出ていたが、現在の尾末町の図書館がまだ使用できると仮定して、まずは稲枝に図書館を設けるのが有効だ」と話した。
 このほか、危機管理体制については豪雪の時の予算措置が少ない点を指摘した上で「台風などで避難する際、場所によっては芹川を越えていく場合があるので、根本的に避難場所を見直す必要がある」と語った。
 前川氏は教育長時代の実績として、「ESD教育と呼ばれる持続可能な社会を担う人づくり。これを各学校において実施してきた」とした上で、子どもの貧困については「子どもの6人に1人が貧困状態にあると言われており、教育長時代もそのような家庭を見てきた。中学3年生までの医療費を無料化することで、子育て世代への負担を軽減したい」と話した。
 次期市政で大規模事業が続く点については「大事なのは人への投資であり、そのための予算を確保しなければいけない。現市政が進める国体関連予算は100億円近くだが、実際に進めると、家計でいう貯金にあたる財政調整基金が少なくなる」とし、新市民体育センターについては「今後、武道館やスイミングセンターを整備できるように、拡張性のある場所に建設するべき。計画されている南彦根駅前は福満遺跡や住宅地もある。ひこね燦ぱれすも取り壊す必要はない」と見直す考えを示した。
 大学卒業後に彦根に戻って来られる体制作りとしては、滋賀大学に設置されたデータサイエンス学部をあげて「この学部を中心にビジネスコンテストを実施することで、若きベンチャーキャピタリストが招ける。若い人が利用できる最先端の機能を備えたビジネスオフィスを提供し、そこから起業する体制ができれば、若者が戻ってくると思う」と語った。稲枝地区の開発については「稲枝駅西口の道路整備を早期に進めるため、稲部遺跡の発掘調査行って遺跡として残す規模、境界を決めた上で、一帯の整備を進めたい」と話した。
 大久保氏は大規模事業について、「あらゆる手段を使って、やりくり算段しなければいけない。4年前の就任時も稲枝駅の整備、紫雲苑、給食センター、庁舎の耐震化が立て込んでいたが、やりくりして小中学校へのエアコンの設置も進めた。厳しい中で、国や県の支援を受けながら進めたい」と説明。図書館の整備方針については「図書館は市民にとって非常に重要だと認識している。用地の確保、地域のアクセス面を考えて、彦愛犬の広域の図書館機能という視点で丁寧に着実に実行したい」とし、広域ごみ処理場については「応募のあった地域から色んな声を聞いており、何とか実現していくため、選定を延期した。4町との合意形成に時間も必要だと思い判断した」と述べた。
 子どもの貧困対策については「子どもの貧困は見えにくいが、例えば、子ども食堂においても現場でしか解決できない糸口がある。行政として何ができるのかを議論しながら進めたい」と説明。若者が帰郷し易い環境作りとしては「大企業を誘致するのが難しい中で、ベンチャーや研究開発の小規模な企業の立地を促進する仕組みを作った。人口は少し増えているため、この状況を維持するため、あらゆる施策をしていきたい」と語った。
 稲枝地域の開発・振興策については「稲部遺跡の範囲がどこまでかを調査しながら、地元の皆さんにも提示して、活用方法を考えたい。県道2号線から稲枝駅までの開発について地区計画を進める中で、着実にできるようにしたい」と述べた。
FM彦根で随時放送
 エフエム彦根(78・2MHz)は立候補予定者へのインタビューの模様を10日から告示日前日の15日まで(13、14日除く)随時放送する。
 放送時間は10日~12日が午前6時5分、同8時、午後0時半、同3時、同4時、同5時35分、15日が午前8時、同9時、同11時、午後4時、同5時、同6時の1日計6回ずつ。
 立候補予定者1人につき、1回20分間で時間に分けて放送していく。問い合わせはエフエム彦根☎(30)3355。

夢京橋キャッスルロードの店舗に切り絵作家の早川鉄兵さんの作品がお目見え

 彦根市の夢京橋キャッスルロードの店舗に、切り絵作家の早川鉄兵さん(35)=米原市=の作品がお目見えし、観光客らの目を引いている
 早川さんは石川県金沢市生まれ。幼少期に母親と一緒に切り絵で遊んだのをきっかけに興味を持ち、平成23年から米原市の伊吹の地で創作活動をしている。
 今年8月に映画「関ヶ原」が公開される予定で、石田三成が再び注目されることが予想されるため、市民有志団体・三成の戦実行委員会が「関ヶ原鳥獣戯画」と題して早川さんの切り絵でキャッスルロードを彩るイベントを企画。
 早川さんはこの企画に合わせて、自宅近くに出没するというクマやリスなどの動物の白と黒の作品約40点を制作。3月31日と今月3日に夢京橋あかり館、あゆの店きむら、源内、千成亭、政所園の店先に数点ずつ設置した。それぞれの動物は映画にちなんで、甲冑を着けたり、弓矢や刀、やりなど武具を持ったりしている。
 早川さんは「戦をしているようだけど、どこかほのぼの感じて頂ける作風にした。古い町並みにも合わせました」と話していた。展示期間は未定。

2017年4月10日月曜日

稲枝地区を発展させよ

 市南部(稲枝地区)をいかに発展させるか―。これまでに幾度となく話題にあがっているが、いつまで経っても変わらぬ現状に、稲枝の住民からは「市の施策は市街地(北中部)ばかりだ」など皮肉る声が毎年のように聞かれる。
 稲枝では昨年、稲部町と彦富町で発掘中の稲部遺跡が極めて重要な遺構であることがわかり、全国的にも話題になった。
 道路整備に伴う発掘調査だったため、市は今年2月に遺跡を保存して道路計画を見直すことを決定。一方で、一部の地元住民からは道路整備が遅れるため、計画通り進めるべきだとする声もあり、市は遺跡の保存と道路整備の両輪で進める必要がある。
 稲部遺跡と道路整備の計画がある稲枝駅西口エリアでは、朝鮮人街道にかけて商業施設などを建設する計画が以前から持ち上がっていたが、農地転用の話が進まずに開発が遅れているという。
 市が道路計画の見直しについて、さきごろ稲枝住民を対象に行った説明会では、住民から「彦根城を中心にした施策が目立つ」「稲枝は地盤沈下が年々、進んでいる」など、稲枝地区の開発と振興を求める意見があがっていた。
 稲部遺跡を中心にした稲枝地区の開発を早急に進めるべきであり、遺跡に関する博物館などの文化ゾーン、住宅エリア、商業施設の整備を進めると共に、荒神山と稲部遺跡を絡めた観光面でも活用できるであろう。
 稲枝駅西口エリア以外の地域でも農業を中心にさまざまな分野で開発、振興を図れる要素があり、稲枝地区の発展は次期市長の力量次第である。 【山田貴之】

平和堂、平松正嗣・専務取締役営業統括本部長が代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)就任へ

 平和堂は4日、平松正嗣・専務取締役営業統括本部長(59)が代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)に就任する人事を内定したと発表。夏原平和代表取締役社長(72)は代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就く。来月18日の定時株主総会と取締役会で正式決定する。
 平松氏は大阪出身。阪大卒業後、ソニーやスクウェア・エニックスで務めた後、平成22年1月に平和堂へ入社。常務取締役などを務め、同27年5月から現職だった。
 平和堂広報課は「創業60周年の節目を迎え、今後一層社業を発展させるため決めた」としている。夏原社長の息子の行平専務や陽平取締役に繋げる前に会社形態を盤石にしたい考えもあったとみられる。

2017年4月5日水曜日

彦根市長選、現職優勢の状況に新人2人が一本化に向けて協議

 彦根市長選に出馬を予定している、前市教育長の前川恒廣氏(61)と元毎日放送記者の田原達雄氏(68)が3日、「候補者の一本化」に向けて協議を行ったことがわかった。協議の場には自民党の西村久子県議も立ち会った。
 市長選にはほかに現職の大久保貴氏(53)が出馬を予定しており、同陣営には民進系の国会議員、県議、市議のほか、自民系の県議、市議も応援している。前川、田原両氏にも自民系の元県議や市議が付いているため、いわゆる保守が3陣営に分裂した状態になっている。また現職という強さと知名度で勝ることから大久保氏が優勢とみる両陣営の危機感も背景にあると思われる。
 関係者によると、西村県議らが仲介となって、前川氏と田原氏を招いて稲枝で協議を行った。事実上、前川氏を候補者として擁立し、田原氏が出馬を取りやめる形の一本化を目的にした話し合いだったが、結論は出なかった模様だ。田原氏は協議後の本紙の取材に「出馬の方向だ」と話しているが、16日の告示を前に最終的な調整が続くとみられる。

彦愛犬地域のごみ処理施設の建設候補地の選定「29年度に遅らせる」

 彦根愛知犬上広域行政組合(管理者・大久保貴市長)は3月30日、28年度中を予定していた彦愛犬地域のごみ処理施設の建設候補地の選定を「29年度に遅らせる」と発表した。
 昭和52年に建てられた野瀬町の彦根市清掃センターの老朽化に伴い、同組合が代替施設の候補地を模索。平成27年10月からは1市4町内で、45㌶の土地が確保できる地域の自治会長や土地所有者を対象に新施設の建設候補地を募集し、昨年7月末までに彦根市内の3地域、愛荘町内の2カ所から応募があった。同組合内の選定委員会が候補地の順位付けを行い、今年2月13日の15回目の会議を経て、1市4町の首長と彦根の副市長による管理者会に報告。管理者会では今月9日までに3回の会議を開いてきたが、「5カ所とも候補地になり得るため、時間をかけて協議する必要がある」として、候補地選定を「できるだけ早い時期に」遅らせることを決めた。
 今後のスケジュールとしては、管理者会が候補地を決めた後、基本計画を策定し、ボーリング調査や測量などを行い、平成30年度以降に4年半ほどかけて環境アセスメントの調査、土地の購入などを経て、同35年ごろから建設に入り、同39年度中に完成させる予定。総経費は平成20年度の基本構想時で約102億円と概算されている。
 新しいごみ処理施設の候補地選定を巡っては、これまでに石寺町、海瀬・三津町の地域が候補地にあがったが、地盤の軟弱や地元の反対で、石寺が平成20年5月に、海瀬・三津町が平成25年3月に計画が白紙化した経緯がある。3度目の今回は初めて公募制を採用し選定を進めているが、一部の地域では反対の署名活動も行われるといい、今後の動向が注目される。

2017年4月4日火曜日

大規模事業を精査せよ

 次期市長の任期中は大規模事業が相次いで実施または進捗する予定で、市の財政面の負担が懸念され、各事業の見直しが必要な状況だ。
 まず市役所庁舎耐震化関連はすでに整備が始まっており、平成29年度、30年度で計約36億円が支出される。国体関連費としては、主会場整備に伴って移転する新しい彦根市民体育センターには約60億円(業者は54億円とも)、再整備される金亀公園には24億3000万円とする概算が公表されている。
 このほか、図書館整備においては河瀬・亀山学区に中央館を新築し、現在の市立図書館を北部館として改築、稲枝地区に南部館を整備、新しい市民体育センター内に図書機能を持つサービスポイントを設置する計画がある。これらの総経費はまだ未定だが、数十億円に上ることが予想される。
 さらに彦愛犬1市4町で建設候補地を選定中の広域ごみ処理施設は、平成20年度時の概算で102億円の数値が公表されている。
 上記以外にも、渋滞緩和のための道路整備、稲枝駅西口開発、彦根駅東口整備などさまざまな事業が予定されており、相次ぐ大規模事業を計画通りの規模で進めれば、市の財政状況の悪化が予想される。
 市は今年1月に公表した平成29年度から33年度までの彦根市中期財政計画において、社会保障関連費や公債費、建設関連(庁舎耐震、国体のインフラ整備、新市民体育センター整備)の投資的経費が増加することで「財源の不足が見込まれる」とし、この財源不足に対しては「約50億円(平成27年度末)ある財政調整基金などの基金の取り崩しなどで収支の均衡を図る」と説明。その上で「限りある財源を効果的に配分し、将来の財政負担に備えた財政運営が必要」としている。
 しかし基金の取り崩しはもちろん、国や県の補助金頼りで、これらの大規模事業をそのまま進めることは、市の財政が悪化するのは必然である。一般財源のうち借金の返済にあてる割合・実質公債費比率は平成27年度決算時で8%だが、10年前ごろの20%台に悪化することなきよう、各事業規模の縮小または見直しが求められる。【山田貴之】