2012年1月26日木曜日

芥川賞作家・福島出身の玄侑宗久さん 原発・自衛隊・天皇制で持論、琵琶湖塾で

 芥川賞作家で福島県三春町の福聚寺住職・玄侑宗久さんを講師に招いた琵琶湖塾(田原総一朗塾長)が22日、滋賀県立大学(彦根市八坂町)で開かれ、原発問題や自衛隊のあり方、天皇制について持論を展開した。
 玄侑さんは原子力の問題について、全国で49基の原発が停止していながらも、「停電もせず、何とかなっている」とした上で、「全部、動かさないと何ともならないという論理は信用できない」「(原発を再稼働させて)経済が右肩上がりで成長していくことは現実的に不可能ではないか」と主張。「電気を作ったが、使い切れていなかったというのが実情で、再稼働の容認派には避難所や仮設住宅で暮らす方々がいる福島に『一度、来てみて』と言いたい」と脱原発のエネルギー政策を求めた。
 玄侑さんは国の東日本大震災復興構想会議の委員も務めていることから、官僚たちの体質についても解説。「委員が色々な提言をしても、各省の力で最終的に実行に移されない。各省の利益しか考えておらず、混乱が拡大している」と、被災地支援よりも省益を優先する官僚の体質を批判した。
 復興で貢献した自衛隊に対しては、「もしも自衛隊が存在しなければ、ここまでの復興はなかったであろう」と持ち上げた上で、「憲法上、自衛隊は軍隊ではないというあいまいな位置の中で、どういう集団か、その到達点にきたのではないか」と述べ、軍隊としてよりも災害支援などを専門にした集団にするよう暗に提案した。
 天皇皇后両陛下が被災地に何度も足を運ばれていることにもふれ、「どこかの国の総理(菅直人前首相)と違って、両陛下はひざまずいて、被災者に慰めの言葉をかけられている」「日本人を代表し被災者を慰めたり、激励したりする象徴天皇としてのお姿が、こんにち明らかになったのではないか」と、天皇制の意義を解説した。
 来場者からの「これから被災地へ向かう人たちは何を支援すればよいか」の質問に対しては、「必要なことは個別化しており、支援の物資や活動が逆に迷惑になっていることもある」「各被災地、各避難所、各仮設住宅に何が必要か聞かないとわからない」と答えた。
 今回(通算7回目)の琵琶湖塾は2回目の公開講座として開かれ、塾生のほか、一般参加を含め約260人が出席した。田原さんはほかの仕事のため欠席した。

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