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2012年5月6日日曜日

憲法と保守を考える


 3日の憲法記念日に先駆けて、自民党は4月27日に憲法改正案を定め、天皇陛下を「元首」、自衛隊を「国防軍」、国旗・国歌を「日本国の象徴」などと規定。保守色を前面に打ち出した。みんなの党、たちあがれ日本も保守色が濃い憲法改正案をすでに示している。
 3党が「保守」にこだわった理由としては、保守勢力と対立軸にあった旧社会党の党員や市民運動家出身者がいる民主党が、保守派が重視する安全保障や外交面で失点を重ねているためである。
 保守とは何か。一言でいえば、その国の文化や伝統、慣習に重きを置く価値観である。日本でいえば、天皇陛下をはじめとする皇室を敬い、現憲法(特に9条)を改正し、対中国に備えて軍備を増強し、領土や拉致問題に関心がある―などの政策をもっている。保守派に反するのが革新派といい、前記の政策には反対または軽視の考えが多勢だ。
 江戸時代で例えるならば、開国派の井伊直弼らが革新派で、安政の大獄などで抹殺された吉田松陰ら尊皇攘夷派が保守派だといえる。実際に保守派の聖地ともいえる靖国神社内の遊就館では直弼を悪人扱いし、松陰らを称えている。ただ、直弼は茶や能楽などに秀でた文化人であり、日本の伝統を後世に残したという意味では保守派の側面もあったといえる。
 つまり、ただ単に保守的または革新的な政策だけで、国家は決して発展せず、革命的な改革が常に求められる。不易流行という言葉がまさに言い得て妙であり、いつまでも変わらない「不易」の中に新しい「流行」を取り入れる発想の転換こそが不可欠である。
 小生の好きな作家の一人・江藤淳氏(故人)は、著書「保守とはなにか」(文藝春秋)で「時には保守するために大きな改革を行わなければならない。そこには論理の矛盾がある。保守主義の弱点なのかもしれない。しかし、保守とはイデオロギーではなく、一つの感覚だからやむをえない。人の世はすべて留めておくことはできない。変えるべき点は改めることを憚らない」と記している。
 現憲法に関していえば、第二次世界大戦の敗戦後の占領下で公布され、昭和22年(1947)5月3日に施行された。きょう3日で65年目を迎えるが、これまでに一度も改正はされていない。
 産経新聞が先月末に行った世論調査では57・6%が「憲法改正が必要」と回答した。一般的に憲法改正は保守派であるというレッテルが貼られているが、現代でいえば、護憲派こそが「保守的」な思考だといえるのではないか。
 小生は世情に合った憲法に改正(改革)する、または憲法を新たに創設する考えこそが、日本の再興または飛躍につながると確信している。普段、身近な医療や福祉、環境にしか関心がない我々国民も、今日ぐらいは憲法について考える日にしたい。【山田貴之】

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