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2013年2月16日土曜日

体罰を再び考える

 小生はこれまでにも何度か体罰についてのコラムを書いてきたが、報道機関を中心に「体罰」という言葉だけが一人歩きしているので、改めて体罰について考えたい。
 体罰に関して、自民党の伊吹文明衆院議長は9日、「体罰を全く否定して教育なんかはできない」「何のために体罰を加えるのかという原点がしっかりしていない。立派な人になってほしいという愛情をもって体罰を加えているのか、判然としない人が多い」などと述べた。
 体罰を全否定する論理への忠告と、体罰の域を超えた暴力におよぶ指導者を批判したと見られる意見であり、小生は共に賛意を示したい。
 桜宮高や女子柔道などの事案は、指導者自身の感情的抑制のために密室で相手に肉体的、精神的苦痛を与え続けたという理由から、暴行または虐待だと言え、論ずるに値しない。
 体罰について、日経は10日付の「反体罰」のコラムで、「体罰の社会史」(江森一郎著)という本を活用しながら、江戸時代の藩校や寺子屋は体罰に抑制的で、儒学者が体罰の有害無益さを説いていたとし、明治政府も戦後の教育基本法と同様、体罰を禁止する法令を定めていたことを紹介した。
 現代の体罰は戦中の軍隊で生まれた名残だと予想できる。もちろん体罰を撲滅できれば、それに越したことはないが、学級崩壊や核家族化、モンスターペアレントなど子どもたちを巡る環境が社会問題化している中で、はたして体罰を全否定して子どもたちを健全に育てていくことはできようか。
 スポーツや学校生活において指導者または教職員はなぜ、体罰を加えるのか。スポーツの場ではミスや怠慢さ、悪ふざけ、個人プレーなど、学校生活では授業妨害やいじめ、危険行為などが、その理由にあげられよう。すべてが体罰の対象にはならないが、例えば、他者の命に関わるような悪質ないじめや危険行為などには、その最終的な手段として体罰は必要である。
 それでも「体罰を無くせ」というのなら、まずは保護者が教職員に体罰をさせないように子どもを厳しく教育しなければならない。それさえも出来ぬのに、体罰撲滅だけを声高に主張するのは無責任極まりない。
 体罰を撲滅させる前に、すべての子どもたちが健全に育つための指導方法や教育カリキュラムを構築することが大前提であり、保護者や体罰全否定派もその運動をまずは展開していくべきである。【山田貴之】

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