彦根市大薮町の富川和代さん(75)は、彦根ユネスコ協会こどもにほんご教室JUMP(ジャンプ)のアドバイザーなど日本語指導者を長年務めている。今月14日にはひこね燦ぱれすで日本語検定を実施した。富川さんに外国人向けの日本語教育や多文化共生の課題、日本人の日本語力について聞いた。
「オリジナル教材」必要
指導者の「人手不足」課題
富川さんは福井県敦賀市出身。父親は国鉄(JR)の社員で転勤が多かったため、中学校のころには3校に通い、虎姫高校時代は下宿生活も経験した。大学卒業後は滋賀県立の高校やミシガン州立大学連合日本センターで国語や日本語を教え、近江高校では13年間、英語の指導にもあたった。また滋賀県立大学をはじめ大学や専門学校の非常勤講師として、日本語や日本語の教授法、国語・英語に関する科目を担っている。
外国人の労働者や留学生が増加していた1990年以降は「日本語を学びたい外国人を支援しよう」と、ボランティア団体に所属し日本語を教えてきた。現在はJUMPアドバイザーや彦根にほんご教師会WAGT代表、日本語検定研究委員などを務めている。
そのうちJUMPには現在、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、米国、モンゴル、ネパール出身の幼稚園児から中学生までの子ども16人と保護者4人が大学サテライトプラザ彦根で学習している。コロナ禍以前は保護者の受講も多かったが、仕事などの影響で減ってきているという。
富川さんは、日本語を教えるボランティアの人手不足と時間的な忙しさから、「学習している外国人の子どもたちや保護者の希望に合っているかが課題だ」とした上で「今後は文化や母語が異なる子どもたち一人一人に合ったオリジナルの教材の作成が必要な状況だ」と述べた。
日本人の日本語力も指摘
多文化共生「みんな違っていい」
日本人と外国人が一緒に過ごす「多文化共生」の課題について、富川さんは文化、習慣、ものの考え方の違いをあげながら「互いに理解しようと努力する必要はあるが、結局は『みんな違って、みんないい』ではないだろうか。日本人同士でも育った環境によって生活習慣などに違いがある」と説明。JUMPでは外国人の子どもたちのスピーチ大会や成人の日本語学習者のディベート大会を開催しており「市民の皆さんとの交流する機会になっている。また異なる意見の論戦は多文化共生の第一歩になるとも思う」と話していた。
富川さんは大学で日本人向けの日本語科目も担当。日本人の日本語力について「国語の苦手な人には漢字の力をつけるよう、大学生には社会人になる準備として特に敬語と慣用表現、四字熟語を理解できるようにアドバイスしている」と解説。そのうち敬語については「若者だけでなく、大人も正しく使えていないと感じる。敬語は『言葉のおもてなし』とも言える」と語った。
一方で、子どもの頃は父親の仕事の影響で駅近くの官舎で暮らしていたため、電車に乗ることが好きで大学の卒業旅行も電車での旅だったという。富川さんは「新型コロナが収束した後はゆっくりと国内外を特急電車で旅をして、全国各地のさまざまな日本語や海外の言葉に触れたい」と笑顔を見せていた。