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2022年8月15日月曜日

戦争と平和を考える

終戦記念日のこの時期、先の大東亜戦争または太平洋戦争について思いを巡らす国民は少なくないであろう。そして今年は「戦争」に対し、身近に感じる年でもあり、分岐点の年でもあるように感じる。
 戦争は人間同士の殺りくであり、悲惨かつ壊滅的な被害を生じる点において、起こってはならぬ惨事であることは国民大多数の共通認識である。しかし例えば、今のウクライナのように国土を他国に侵略され、奪われても良しとする絶対的平和主義の主張に対しては大多数が異を唱えるに違いない。
 世界を鳥瞰図的に見ると、G7を主にする日米欧の自由・民主主義国家と、中ロら権威主義(または全体主義)国家との対立が強まっており、ウクライナ情勢はまさにその狭間にあり、台湾においても米中対立に巻き込まれている感がある。
 その中ロに挟まれているのが我が国であるが、もし台湾で戦争が起こり、米中が対決した際、米軍の拠点は日本(沖縄)であり、中国軍の攻撃の的になるのは言わずもがなである。そして先の大戦で日ソ不可侵条約を破棄して、米軍の原爆投下直後に宣戦布告し、北方四島の占領後も不法占拠を続けているロシアが、混乱に乗じて再び日本の北方を侵略してくることも容易に予想できる。
 
安倍氏の国葬賛成
防衛費の増大も
 
 ストックホルム国際平和研究所のデータによると、昨年の世界の軍事費シェアは米国が38・5%とトップ、次いで中国が14・1%と米中で5割超となっている。そしてインドが3・7%、ロシアが3・2%、日本が2・6%、韓国が2・4%と続く。中国は情報公開が不透明なため、さらに多いとの見方もできる。
 翻って、日本の防衛費はGDP比1%台で推移しており、ウクライナ情勢を受けて政府は2%超を目指す意向だが、一部の野党や国民は「戦争をする国にするのか」と反対を主張し、その是非が今後、議論になるかもしれぬ。
 しかし多くの国民はロシアのウクライナ侵略や中国の台湾への威圧行為を目にしたことで、権威主義国家に綺麗事は通じぬと理解しており、防衛費の2%超も認めるに違いない。小生としても、国際法に悪気もなく違反するロシアなどの国家が存在する限り、抑止力の観点からも十分な水準の軍事力を保持するべきだと考える。
 今、国内では安倍元首相の国葬に対する是非が話題の一つに取り上げられており、世論調査ではその賛否が分かれているという。小生としては、安倍元首相の在任中のモリカケや桜の諸問題よりも、国内はもちろん世界に影響を及ぼした功績を高く評価しており、国葬に賛成である(基準が明確になっていない点から大賛成とまではいえないが)。
 小生がここで安倍元首相の死に触れたのは、先に述べた民主主義国家と権威主義国家との対立を収める力を安倍元首相が保持していたと考えるからである。その理由については先日のコラムでも述べたが、権威主義国家にとって、いわゆるその国にいる保守派(日本ではタカ派とも言う)の急先鋒は脅威であると言え、プーチンは安倍元首相と27回も会談した。また安倍元首相は、日米欧と中ロの対立に距離を置き、両軸を支持するインドなどの国家との関係も濃かった。いわば安倍元首相には世界情勢を安定させる力があったとも言え、その亡き後の世界情勢を危惧する者は小生だけではあるまい。
 国防費の増大にしろ、国葬にしろ、賛否については分かれるかもしれぬ。しかし、我が国で再び戦争を起こさせないという思いは共通認識のはずである。先の大戦で亡くなった御英霊に感謝の誠を捧げながら、現代の日本人が苦手な「戦争と平和について考える」お盆にしたい。【山田貴之】

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