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2011年3月6日日曜日

おたふく風邪 「ワクチン接種必要」小児科医・松井克之さん、1000人に1人がムンプス難聴に

 滋賀彦根新聞は2月9日付で、ポリオ(脊髄性小児麻痺)の生ワクチン接種による乳児の感染事例が報告され、ほかの先進国が導入している不活化ワクチンの採用を求める動きがあることを報じた。この記事を見た、豊郷病院に勤務する小児科医・松井克之さん(38)=写真=が、ポリオだけでなく、おたふく風邪(ムンプス)などのワクチン接種についても「日本は後進国だ」と指摘。乳幼児への接種を勧めている。
 今年2月から彦根を含む多くの自治体で、ヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチン、ヒトパピローマ(子宮頸がん)ワクチンの公費負担による接種が始まった。松井さんはこれらのほかに、おたふく風邪や、水ぼうそう、B型肝炎のワクチンの接種が必要で、特に回復不可能の難聴(ムンプス難聴)を発症するおたふく風邪については、欧米などほかの先進国を含めた118カ国(平成21年WHO調査)で定期接種をしていることから、「日本でも早急に導入するべきだ」と求めている。
 近畿外来小児科学研究グループによると、おたふく風邪の感染者7400人のうち、7人がムンプス難聴になったと報告している。松井さんが豊郷病院で診察した中にも発症者がいた。子どもを早めにおたふく風邪にかからせようと、わざと感染させる親がいるが、「そのような事は絶対に止めてほしい」と忠告している。
 おたふく風邪のワクチンは、ほとんどの国で2回接種となっており、WHOはワクチン接種で撲滅が可能な疾病にリストアップしている。
 日本でも平成元年からおたふく風邪を含む混合ワクチンの定期接種が行われていたが、副反応としてまれに起こる無菌性髄膜炎の発生が問題視され、平成5年に中止された。国立感染症研究所によると、現在の日本での接種率は約30%で、4年に1度、全国規模の流行を繰り返している。
 おたふく風邪ワクチンの接種は1歳からの受付で、1回5000円~6000円。松井さんは「おたふく風邪で回復不可能な難聴にかかることは、あまり知られていない。ワクチン接種のまれな副反応よりも、自然に感染し合併症を起こす確率の方がはるかに高く、接種をすすめたい」と話している。松井さんは滋賀医科大学(大津市)で小児科助教を務めながら、豊郷病院で毎週金曜日に診察を担当している。
 ※おたふく風邪=世界的にはムンプスと呼ばれる感染症。唾液や尿を感染源とし、主に発熱と耳下腺の腫張などを発症し、耳下腺の腫れは発症後1~3日間がピークとなる。日本では3~6歳が全患者数の約60%を占める。ほかの合併症として、発熱や頭痛、おう吐などを伴う無菌性髄膜炎があり、入院が必要なこともあるが、ほとんどの場合改善する。ただ、ムンプス難聴は治らず、ムンプス脳炎では死亡することもあり、神経の障害を残しやすい。思春期以降に初めて感染すると、睾丸炎や卵巣炎の合併症を起こし、男性では精子が減少することがあるが、不妊になることはまれだ。

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