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2021年10月11日月曜日

党議拘束・会派拘束と中国共産党政権

公共施設のひこね燦ぱれすの図書館化を巡り、彦根市議会の最大会派・公政会が「会派拘束」をかけた上で採決にのぞんでいた。これまでにも何度か会派拘束を耳にしてきたが、今一度、その意義と必要性を確認する。
 大辞林によると、拘束とは①捕らえて、行動の自由を奪うこと②行動や判断の自由を制限すること―とあり、政治などの舞台では②の意味を言う。国政においては政党内での「党議拘束」との言葉もある。つまりは思想信条が同一の議員が集まった政党や会派が、政局を左右する際などの重要な政策に関して、その賛否を同一にするために制限をかけることを党議拘束または会派拘束と呼ぶ。
 しかし、民主主義国家における我が国において、党議拘束や会派拘束という言葉を耳にするたびに違和感を抱くのは小生だけではないだろう。
 「行動や判断の自由を制限する」行為は最近で言うなら、香港の民主化運動を中国共産党の一党独裁のもとに策定された「法律」(香港国家安全維持法)による強制力と、それに伴う暴力において抑え込んだ中国共産党の体質と共通する。民主化を呼びかけるマスコミや学生運動の中心人物らを相次いで逮捕し、その行動と判断の自由を制限した愚行は記憶に新しい。ミャンマー国軍のクーデターによる政権も同質である。
 
踏み絵のごとき慣習

 しかしながら日本国内において党議拘束は通例化し、国会への法案提出前に与党の事前審査で決定し、衆参両議員に対し党議拘束をかけている。2005年の小泉純一郎首相による郵政選挙では党議拘束違反者を公認しない行為が話題にもなった。その後も暗黙のルールのように続いてはいるが、近年では党議拘束を疑問視する声が国政でもあがっている。先の自民党総裁選でも河野太郎氏が「党議拘束を全部にかけるのはやめた方がいい」と語っていた。この潮流は地方議会でも同様の指摘ができる。
 いわば、党議拘束および会派拘束は民主主義国家の政治の舞台で残る、踏み絵のごとく自由なき慣習だと言え、時にその違和感を共通認識として抱きつつも、政治の世界においては例外として利用されている。
翻って、彦根市議会をはじめとする地方議会における会派拘束だが、「行動や判断の自由を制限する」との観点からすれば、その発動は不要である。政局の安定等を目的とした国政の慣習に倣うのではなく、地方議会では今後、会派内でその規定および概念を無くす努力を求めたいものだ(紙面では「伝家の宝刀」等の文言を使い、会派拘束の発動を認める形の表現でしたが、その後、会派拘束は地方議会で不要だとの結論に至ったため、ネット版では後半部分を一部修正しました)。【山田貴之】

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