2008年12月2日火曜日

「直弼=極悪人」の現実 

 先日、東京を訪れ、井伊直弼の墓が残る豪徳寺(世田谷区)や桜田門、直弼邸跡などを見て回ったほか、靖国神社(千代田区)の遊就館で開かれている特別展「安政の大獄150年・幕末維新展」を観覧した。
 豪徳寺などは後日の紙面で紹介するが、靖国神社での常設展と「安政の大獄150年」展では、直弼が極悪人扱いされている「現実」を如実に見せられた。
 靖国神社には、安政の大獄で直弼によって処刑された吉田松陰や橋本左内を初め、坂本龍馬など幕末期に国事に奔走して殉難した志士たちが合祀されている。遊就館での常設展では、松陰を「我が国が天皇中心に悠久の昔より連綿と続いている事を自覚し、尊皇の情を深め、尊攘を説いた人物」として、その功績を称えている。また、大東亜戦争(太平洋戦争)で亡くなった軍人が両親に贈った生前の手紙でも、松陰の精神を敬う論述も見られた。
 一方で、直弼については、「勅許を待たずして日米同盟を締結した」「安政の大獄で松陰らを弾圧した」「直弼の独裁」などと明記。「井伊直弼」の文字をほかよりも数倍大きく記し、その「悪事ぶり」を強調している。
 「安政の大獄150年」展においても、松陰ら幕末志士を紹介するコーナーを設け、「(松陰ら)先人たちの御遺徳を学びたいものだ」と称えている。
 また、豪徳寺には初めての訪問だったが、駅からの道中には「井伊家」や「直弼」を示すのぼりなど一切なく、招き猫のグッズが数店で販売しているぐらいだった。墓場の奥に設けられた直弼の墓も、小生以外、訪れる人の姿はなかった。
 桜田門では石碑さえ建っておらず、堀沿いの柳の木々が、直弼の心情を表しているかのように淋しげになびいていた。直弼邸跡には、桜田門から国会議事堂方面に数百㍍行った場所に、案内板がひっそりと立っている。

 東京に限らず、直弼に対する世論は、いまだに「極悪人」であることに疑いようはない。開催中の井伊直弼と開国150年祭では、新たな直弼像の発信がコンセプトの1つだが、今のところ、その発信はまだまだ道半ばだ。
 直弼の文化人や開国という「功」を発信するのも良いが、安政の大獄という「罪」に対して目をそらしていては、世論にはいっこうに理解されまい。「井の中の蛙」とならぬよう、開国150年祭の「主催者」である彦根市民は肝に銘じながら、祭りに参加しなければならない。【山田貴之】

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