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2017年2月23日木曜日

稲部遺跡保存で道路計画見直しへ、市が決断

 弥生時代後期から古墳時代中期(2〜5世紀)時代の大規模な遺構が見つかった彦根市稲部町から彦富町にかけての稲部遺跡を保存するため、彦根市は当初予定していた道路計画を見直すことが16日にわかった。今後は道路を含めた稲枝駅西口開発の早期実現を目指す地元側との調整が必要になる。
 稲部遺跡では、宅地造成工事に伴って昭和56年に第1次の発掘調査が始まり、以降、市道芹橋彦富線・稲部本庄線の道路改良工事に伴って、第6次が平成27年6月から昨年3月まで約1042平方㍍の範囲で、第7次が平成27年11月から約430平方㍍で実施。
 そのうち第7次のエリアからは、弥生時代末期から古墳時代初期にかけて、鉄製の武器や工具を作っていた当時の国内最大規模の鉄器生産センターだった可能性がある遺構が発見。また古墳時代前期の巨大な倉庫が建っていたとされる建物跡も見つかり、当時の物流拠点の中心地だったことが判明した。
 これらのことから、稲部遺跡の集落は弥生時代後期から古墳時代中期まで約400年間続き、3世紀前半の邪馬台国時代には最盛期を迎え、当時の倭の国にあった約30のクニの1つに数えられる重要な遺跡として、全国的に注目された。専門家からは「豪族の居館と思われる建物などの遺構が検出されたことは荒神山古墳の築造背景を考える上で極めて重要」(滋賀県立大学の定森秀夫教授)、「抜本的な保護対策を早急に講ずるべきで、保存と活用を慎重に考慮してほしい」(奈良県立橿原考古学研究所共同研究員の森岡秀人さん)など、遺跡の保存を求める声が出ていた。
 一方で、地元では遺跡の保存よりも予定通りの道路整備を求める意見もあり、彦根市では道路河川課と文化財課が協議を重ねてきた。市は道路開発よりも遺跡を保存した上で道路の整備方法を見直す方向に決めたことで、道路開発が先延ばしされる可能性もあるため、今後は地元の調整が必要になる。
国の史跡指定目指す
 彦根市は17日、稲部遺跡の国の史跡指定を目指すと発表した。
 市教委文化財課では発掘中の稲部遺跡のうち、重要な遺構部分の範囲確認を平成29年度に実施。範囲確認後に国の史跡指定を受けて、保存整備を行う予定だ。市はまた稲部遺跡の保存に伴って、稲枝駅西口の道路計画の見直しを決定。
 当初は稲部本庄線と芹橋彦富線をT字路型に合流させて、稲枝駅につなげる予定だったが、稲部遺跡を避ける形で新たな路線を築くことになり、総延長も約200㍍延びる。
 今後は用地買収や地元との合意形成が必要なため、当初の完成予定時期の平成35年度から遅れる可能性がある。

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