先進国は「不活化」採用
ワクチン後進国の日本
生ワクは日本のほか、北朝鮮、モンゴル、中東、アフリカ、中南米、太平洋諸国が導入しているが、欧米などの先進国は不活化を使っている。
2つのワクチンの主な特徴として、生ワクは経口投与のため痛みがなく、国内では無料、万が一に感染して認定されれば国の補償が受けられるなどの利点があるが、ウイルスを弱毒化しているため感染のリスクは無くならない。一方、注射で接種する不活化は感染の危険がないが、有料で、国内では未承認のため、接種により健康被害を受けた場合、国の救済を受けられないというデメリットがある。
しかし生ワクの接種で一生、麻痺が残ることになった事例はあり、被害者らが立ち上げた「ポリオの会」では不活化の導入を強く求めている。3月から始める千葉県立佐原病院では、同病院倫理委員会で不活化の接種を承認し、フランス製を使用する。
滋賀県予防接種センター(守山市)と彦根保健所によると、県(管)内の病院や診療所で、積極的に不活化を採用している医療機関は「把握できていない」とのことだが、複数の予約があれば、受け付ける診療所などもある。
30人分の「不活化」用意
1回5000円前後
30人を制限として来月から初めて不活化ワクチンの接種を受け付ける藤野こどもクリニック(彦根市戸賀町)の藤野英俊院長=写真=に、国が不活化を導入しない理由などを聞いた(聞き手・山田貴之)。
不活化を導入しない理由については、接種によりポリオの症状は出ないが、ほかの注射と同じように体に無い物質を入れるため、じんま疹や血圧低下など一時的なアレルギー反応がまれに出る場合があり、国はその副反応を気にしているとの見方を示した。現在、国は不活化を含めた4種混合ワクチンの治験を進めているが、承認までには数年かかる。その間にも感染する子どもが出てしまうのは事実だ。
免疫力も同じで、ポリオにも感染しない、親への二次感染も防げる。どう考えても不活化の方が有効だが、国が承認しておらず、生ワクのように集団接種ではないため、医師による個人輸入となり、入手に手間と時間がかかる。そのため率先して行う医療機関は少ないという。不活化は、1回の注文が100本までで、乳児の間に3回(4~6歳にもう1回)の接種が必要なため、同クリニックではまずは30人を限度に接種を受け付ける。料金は1回5000円前後。問い合わせは同クリニック℡0749(47)5311へ。
昭和50年~52年生まれ注意
抗体弱く二次感染も
※【ポリオ】3種類のウイルスから感染する急性ウイルス感染症で、感染して麻痺が起こると、筋力の低下や筋肉の萎縮が後遺症として残る。日本国内では昭和56年以降、ワクチンの接種以外での発症は報告されていないが、生ワクチンの接種による発症はある。国内での確率は約200万接種あたり一人とされるが、WHO(世界保健機構)によると、出生100万人あたり2~4人というデータもある。
また昭和50年から52年生まれの親は、1型と呼ばれるウイルスへの抗体が弱いことが分かっており、二次感染の危険性が指摘されている。生ワクチンの接種後、ウイルスは腸で増え、約1カ月間は排便に含まれているため、オムツの処理の際には注意が必要だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿