中国・新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで起きた暴動に関して、「民族浄化」を目論む中国政府に強い憤りをおぼえるのは小生だけではあるまい。
中国には55の少数民族がいるが、総人口の9割以上は漢族が占める。朝日新聞によると、1949年には自治区に25万人しか住んでいなかった漢族が、現在は800万人を超え、自治区内の少数民族の人口は45・5%しかいないという。
新疆ウイグル自治区は、清朝に征服された後の19世紀に新しい国土という意味で「新疆」と名付けられた。1933年と44年に独立運動が起こるが、いずれも失敗に終わっている。49年に中華人民共和国が設立された後や文化大革命時には、指導部による高圧的な宗教、民族の弾圧が行われた。現在、同自治区は漢族が40%を超え、ウルムチでは漢族が最も多い。
同自治区は天然ガスや石油など資源の宝庫だが、巨額の利益を手にしているのは漢族の企業。各国のウイグル人による組織「世界ウイグル会議」では、ウェブサイトで「中国最大級の資源基地にもかかわらず、ウイグル族の経済状況は低い水準にある」と非難している。
今回の暴動は、ウイグル人の出稼ぎ労働者が先月、広東省の玩具工場で漢族に襲われ、2人が死亡したことに抗議するためデモをしたウイグル族と、漢族との衝突が発展したものとされる。
しかし、ウイグル族が不満を抱く根本的な原因は、宗教や教育、言語の自由を奪い、漢族との経済格差を生じさせた中央政府の策謀にある。つまり、豊富な資源がある同自治区を守り、独立させないために骨抜きにしようという企みである。ウイグル族が反発するのは必然であろう。
暴動に関して、ウイグル族の行為や漢族の遺体のみを放送する中国国内の報道も異様である。偏狭報道で自国民を騙し、報道や情報、活動の自由を許さない社会主義国お得意の手法には呆れるばかりだ。
拘束されたウイグル人は300人以上とも言われる。かの国が拘束者に拷問や虐待を繰り返すのは目に見えていよう。
鄧小平の社会主義市場経済により、中国は先進国並みに発展し、近く米国に次ぐ経済大国になると言われる。民族浄化のための人権弾圧と、「自由」を許さぬ思想に対し、及び腰ぎみの国際社会が厳しい声をあげなければ、かの国の暴走は止められまい。 (山田貴之)
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2009年7月10日金曜日
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