小膳は彦根藩十二代・直亮、十三代・直弼、十四代・直憲に仕え、直弼時代には側役のほか、茶の湯や能などの相手役を務めた。桜田門外の変時には江戸から彦根へ正使として伝えに帰ってきている。明治4年には功績が称えられ、埋木舎が贈与され、以降、大久保家が守り抜いてきた。治男さんは埋木舎の五代目当主。
本は、大久保家が保存してきた「大久保小膳留記」などの古文書を参考にまとめられた。「大久保家の系譜」で始まり、「直亮時代の小膳」「小膳、直弼公に仕える」「直弼公、桜田門外に散る」「小膳、藩主直憲公への忠勤」「小膳、明治四年に『埋木舎』を賜る」「埋木舎保存に奮闘する小膳の子孫達」など全第15章。
桜田門外の変については、事件のあった3月3日の夜に小膳を正使として藩士計3人が江戸を発ち、8日に彦根に到着。かごの振動で胃腸や臓物が動かぬよう、腹に白木綿を強く巻き付けていたというエピソードを記している。
また直弼の死後、彦根藩への逆風が吹く中、直弼時代の公文書などを焼却処分することになり、その命を受けた小膳は極秘に自宅へ持ち帰り、万一発見された際は自爆する覚悟で部屋の四隅に爆薬を配置したという史実を紹介。その後、平成初めに埋木舎を修繕した際に隠し部屋が見つかり、多くの公文書が発見され、井伊家史料として発刊されている。
このほか、昭和の戦時中には県護国神社の拡張のため軍部から埋木舎を引き渡すよう要請があったが、小膳の孫にあたる3兄弟が断固反対。埋木舎に押し入った憲兵に対し、「我らの首を切ってから接収せよ」と解体を阻止したという逸話もあげている。
大久保治男さんは「小膳は3代にわたる彦根藩主に仕え、幕末から明治時代の生き証人だった。彦根藩の大変革期の貴重な記録が世に出ることは小膳も喜ぶだろう」と話している。
本はB6判、200ページ。税抜き1500円。発行はサンライズ出版。
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