2011年7月21日木曜日

滋賀県立大学で第5回助産フォーラム、ジャーナリスト・永山美千子氏「日本はミルク社会に」、日本母乳の会代表理事・山内芳忠氏「根本的に見直さなくては」

 7月16日、滋賀県立大学で第5回助産フォーラム「マザーレイク滋賀から母乳育児支援!」が開かれた。1部では日本母乳の会運営委員で桶谷式マッサージの桶谷そとみさんを専門家として世の中に初めて紹介したジャーナリストの永山美千子氏が、「日本の母乳育児の変遷・なぜ母乳育児が進まないのか」をテーマに講演した。
 永山氏は▽日本では戦前はほぼ母乳であったが、GHQの政策で日本的なものが排除され、母子別室と粉ミルクがセットのように広がったこと▽わずか20年で日本の母乳率が20%になり、その後40年かかっても44・8%程にしか回復していないことを説明。その原因として、出産後の母子別室と、ミルクメーカーから産科医への資金提供などを挙げた。
 また、新生児室を設けている施設の理由である「母子同室であると母親の睡眠が妨げられる」「母親は休みたいと要望する」というのは疑問であると指摘。完全母子同室の母親への調査から、他人の子が泣いていても起きないが、自分の子が起きると起きて授乳する母親の様子や、母子同室は「つらいけど嬉しい」という感情を母親がもっていることを紹介。世界の国々の母乳育児にもふれ、「文化的背景がそれぞれにあり、欧米の文献を鵜呑みにしないことも大事である」と述べた。
 このほか、授乳室やキッズコーナーにほ乳瓶の絵のマークが使われていることを挙げ、「日本はミルク文化の社会になってしまっている」「母乳育児は身体感覚を取り戻すチャンスであり、赤ちゃんが『おっぱいをぐっと吸った』という感覚を(母親に)気づかせてあげることが、助産師や看護師が行う母乳育児支援において重要だ」と語った。
 第2部では、日本母乳の会代表理事で産科医の山内芳忠氏が講演し、山内氏が勤務する、1991年に日本で初めて「赤ちゃんに優しい病院」の認定を受けた国立病院機構岡山医療センタ―での取り組みを紹介。▽産後すぐからの母子同室で、授乳回数が増加し、赤ちゃんにとっては胎便の排泄が促進され、黄疸(おうだん)が出にくくなること▽母親にとっては母乳分泌の促進、オキシトシン分泌による痛みやストレスの軽減など、双方にとってメリットがあるとし、「目安としては産後24時間の間に8回以上の授乳が望ましい」と話した。
 赤ちゃんは生まれて間もなく、母親の乳輪から出るにおいを嗅ぐことができ、母親のお腹に乗せると、1時間~2時間かけて自分の力で乳輪に近づき哺乳(ほにゅう)する力をもっていることも紹介。「赤ちゃん側から見た『カンガルーケア』には時間が必要である」と述べた。また、肌と肌の触れ合いで、育児放棄が減少することや母親を育児モードにつなげるケアとして有効であることにふれ、「我々は赤ちゃんが生まれてきたら、赤ちゃんはすぐに哺乳ができると思いがちだが、最初から上手に吸えることができないのが当たり前。母子ともに一歩ずつ上手になっていくものだ」と解説した。
 講演後、開業助産師からは「(自身の)助産院では100%母乳育児であり、母乳育児が進まないのは病院の体制に問題があるのではないか」「祖母の世代が粉ミルクで育児を行った世代であり、母乳育児を希望する若い母親を支援できていないのでは」との意見があった。これに対し、山内氏は「祖父母への教育も大事かもしれないが、家族と地域で母子を支援できるような教育が必要」「ミルク社会になっている現代では、根本的なシステムを見直さなくてはならない」と答えた。参加者には、県大の学生や地域の助産師、看護師のほか、赤ちゃん連れの母親たちの姿もみられ、母乳育児への関心の高さが伺われた。 (山田博子)

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