ピアニストの加藤希央(きお)さん(41)=愛知県安城市=が、平成21年9月5日に旧豊小を訪れた際、講堂でこのピアノと出会い、9月24日に名古屋ピアノ調律センター代表取締役の調律師・宮北春二さん(73)を連れて再訪問。このピアノがスタインウェイ社の1927年製であることが判明した。
昨年5月に旧豊小で行われたチャリティーコンサートの時に、旧豊小を創設した故・古川鉄治郎の遺志を継いで同町の教育と文化・芸術の発展に貢献している財団法人・芙蓉会の古川博康理事長(65)にピアノの修繕を提案。芙蓉会では旧豊小の竣工75周年に合わせてピアノを当時の音色に復活させることにし、今年4月10日から同センター工房で修繕されていた。
同センターでは宮北さんと社員5人が、スタインウェイ社の工場があるドイツ・ハンブルクから仕入れたピアノの弦など消耗品を交換したほか、響板やボディー、けん盤などを往事の姿に復元。修繕前は、本来のスタインウェイ社製からはほど遠いものだったが、約6カ月の修繕を経て、「現代の音楽にマッチする音色を取り戻すことができた」(宮北さん)という。
17日に旧豊小の講堂に戻って来たピアノを弾いた加藤さんは演奏後、目に涙を浮かべながら「(ピアノは)長い眠りから覚めたように元気で、ここまで力のあるピアノだったのかと驚いている。講堂は素晴らしいホールで、このピアノはもちろん、ほかの色んな楽器にも合う場所だと思う」と話していた=写真はピアノを眺める加藤さんと宮北さん。
講演と木管五重奏も
21日は、午後1時~調律した宮北さんと、書籍「あったかいね、永遠の学び舎」の著者・上坂和美さんの講演後、同2時~コンサート開始。加藤希央さんらピアノとフルートなど木管五重奏により、ショパン・ポロネーズ第6番や日本の四季などが披露される。前売り2000円、当日2500円。申し込みは豊郷町観光協会☎(35)3737。
※【スタインウェイピアノ】ドイツで家具製造をしていたハインリヒ・エンゲルハルト・シュタインヴェークが1836年にピアノを製作。その後、米国に渡り、53年にニューヨークにスタインウェイアンドサンズ社を設立した。同社のピアノは厚く強固な胴でしっかりと響板からの圧を支える構造が特徴。旧豊郷小学校のピアノは、大正末期にドイツ・ハンブルクのスタインウェイ社の工場で作られ、米国経由で昭和3年(1928)1月26日に大阪に向けて出荷された物。この年の5月30日、昭和天皇の即位礼の年に、寄付で講堂に設置されたという。
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