天秤櫓では築城410年祭のプロモーションムービーなどに関わった書家の前田鎌利さん(44)、イラストレーターのマハロさん(43)、彫刻家の淺野健一さん(36)が「城・戦国江戸期の不易流行表現」をテーマにした作品を展示。前田さんが考案した「念(おも)い」は市内の小学6年生1000人と7月末のワークショップの参加者50人らが、小さな紙に書いた思い思いの一文字を将棋盤のような盤上に並べられている。ほかに前田さんが書いた「不易流行」「城」も展示。
マハロさんの屏風型の「栄」と布地の「豊」はそれぞれツノガエルとバッタをカラフルな色で表現。マハロさんは「アジアの架空の国をイメージし、410年が経過して更に豊かに繁栄していくことを願って描いた」と解説していた。
淺野さんの「古の闘神」は阿と吽(うん)の金剛力士像の顔部分。高さ1㍍30㌢×幅75㌢×奥行き1㍍で、重さは阿が80㌔、吽が70㌔。7年前に作った作品を塗り直して8カ月かけて制作。現実と夢の世界のあいまいさをイメージしたという。展示期間は築城410年祭が終了する12月10日まで。
「HIKONE STUDENT ART EXHIBITION」は、応募者から選定された全国の美術系の大学や専門学校の学生、卒業生の計20人の作品展。20人は8月21日から27日まで市内に滞在した後、制作に入り、宗安寺に11点、スミス記念堂に2点、寺子屋力石に7点を展示した。
袋町 小橘ののれん制作
神戸大学大学院の山本法子さん(25)=神戸市=は袋町の飲食店「小橘(こきつ)」と「小島」ののれんなどを作り、宗安寺の渡り廊下に設置。袋町が遊郭だった頃を知る小橘の店主に着目し、店主の芸子時代から現在までの写真や店主を描いた絵のほか、芸子時代に働いていた小島と合わせて、現在も実際に使われているのれんを制作した。山本さんは「袋町の取材をして、人と人とのつながりの深さを感じ、それらを表現しようと考えました」と話していた。
京都精華大学大学院を修了した伯井慶伊子さん(24)=大阪府堺市=は「想造」をテーマに、宗安寺本堂の住職と参拝者とが座る境界線に長さ3・6㍍、太さ約1㍉のビニールひも5200本をつるした。「存在していると認識していたものが遮断されることで、見えていなかったものが明確に見えてくることがある」と解説していた。
武蔵野美術大学の菊池風起人さん(21)はスミス記念堂の屋外に「彦根ベースキャンプ」と題したテントを設置。市民のための新たな拠点を作ろうと考案したといい、「展示期間中はテント内に滞在しながら市民と交流したい」と話している。
3会場での展示は10月1日まで。