彦根市役所の庁舎耐震化を巡る市と施工業者との裏合意の真相を究明する市議会の調査特別委員会(百条委員会)が22日、彦根勤労福祉会館であり、前副市長の川嶋恒紹氏ら3人を証人尋問した。これまで市は「川嶋氏が裏合意を主導した」と主張してきたが、川嶋氏は百条委で「作為的」などの言葉を用いながら自身の主導説を否定した。
22日の百条委では、昨年5月17日に行われた2回の入札と、随意契約の相手を決める見積合わせ、一部工事の取り止めや別途工事、仕様変更など9億4200万円分の裏合意を決めた5月19日の市内部の協議と翌20日の岐建との交渉内容が焦点になった。
山本前部長「施行令違反認識」
施工業者の岐建滋賀支店との交渉にあたっていた市都市建設部の前部長・山本茂春氏=写真上=は、市の予定価格(29億3900万円)と応札価格(38億7700万円)で9億3800万円の開きがあった点について「それでも契約はできるものと考えていた」と強調。
5月19日の市内部での協議については「私と、川嶋氏、企画振興部長、総務部長が話し合って、一部工事の取り止めなどを決めた」と主張。だが、今年2月議会で企画振興部長と総務部長は裏合意に関与していない趣旨の発言をし、大久保貴市長も「関わったのは川嶋前副市長と都市建設部長」と答えている。また仕様の変更が地方自治法施行令違反にあたるとの認識について山本氏は「その可能性はあると認識していた」と答えた。
岐建支店長「市から再三口止め」
岐建滋賀支店長の小菅政広氏は、予定価格と応札額との差額に対して「できっこないとお断りしたが、(市側は)何が何でも合意しなければいけない感じでお願いしてきた。その流れに乗った」と、市側が強く要請してきた様子を明かした。
裏合意に対しては「裏契約ではなく、正式に契約したという認識だった」とし、地方自治法施行令違反にあたるとの認識についても「知っていたら、そのような契約はしなかった」と、いずれも否定した。
市との交渉の印象については「なぜ、こんなに急いでいるのか。スケジュールが込んでいると認識した」「市側から公表するなと再三言われたので、まだ市内部で調整がついていないと思った」と答えた。
川嶋氏「作為的、あ然、違和感」
前副市長の川嶋氏=写真下=はまず「本件工事により、議員や市民にご迷惑をおかけし、市政の信頼を揺るがしたことを深くお詫び申し上げる」と謝罪。
これまでの市の発表では、川嶋氏が岐建と裏合意をするよう主導していたとの内容だったが、これに対し川嶋氏は「(裏合意から判明するまでの)経過報告書を見た時はあ然とした。私が(裏合意を)発案した書き方になっており、作為的に作られている印象で腑に落ちない。あらかじめストーリーが描かれて、その流れから外れないよう作られたと疑念を抱いている」と指摘。
その上で「仕様を変更するが、契約そのものは変わらないと報告を受けていたため、最終的に了承したのは事実。今から思えば矛盾する話だった」と釈明し、5月19日の市内部の協議で出されたという裏合意の内容が記された資料についても「その時には資料はなかった。(都市建設部長以外の)2人の部長もいたのに、非常に違和感がある」と述べた。地方自治法施行令違反の認識については「5月の時点では認識していなかった」と答え、法令違反を把握したのは11月から12月にかけた頃だとした。
最後に川嶋氏は、裏合意の問題が公になってから現在までの心境として「日々、頭から離れることはなく、その原因について色んな思いを巡らせている」と吐露。その一部として「市が設定した価格と落札額がなぜあれだけずれていたのか」「仮庁舎を借りている会社(平和堂)との契約期限を守らなければという思いが常にあった」と説明。
副市長を辞任した原因と背景については、大久保市長が裏合意に関わった職員を先に処分をしようとしていたため「職員を先に処分するのは自分自身として許せなかった。市長の主体性をはっきりさせるため私を解職するよう求めたが、最終的には辞表を書くよう言われた」と解説した。
市長「再度の事実確認否定」
庁舎耐震化を巡る裏合意の真相を究明する百条委員会は23日も彦根勤労福祉会館で開かれ、大久保市長が証人尋問された。
裏合意の問題が起こった原因について、市長は「担当職員は予定価格と落札額の金額の開きについて何とかなると思っていた。結果的にその判断に無理があった。各部署がコンプライアンス(法令遵守)を重視していたら、このような事態にはならなかった」と述べた。
市職員からの報告については、「金額の開きの説明はあったが、(裏合意の)報告はなかった」とこれまで通りの主張を繰り返した。
裏合意を川嶋氏が主導したとする市の発表を同氏が否定している点に関して、市長は委員会後の記者陣の質問に「市職員が出したてんまつ書をまとめて発表している。個々で受け取り方に違いが出たのだろう。事実確認は一定のめどが立っており、改めて報告書を作ることはしない」と、川嶋氏の主導説を改めない考えを示した。