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2022年2月28日月曜日

2022年度の新規および主要事業一覧

 彦根市が24日に発表した新年度当初予算案には、彦根市スポーツ・文化交流センターや市清掃センターの可燃ごみの搬出委託、ひこね燦ぱれすの図書館化、彦根城世界遺産登録、近江鉄道の再生支援、彦根中学校校舎増築の整備、フリースクールを利用する保護者への補助などが盛り込まれている。
 
 ▽市スポーツ・文化交流センター整備(22億4080万円)=今年12月オープンに向け今年度分の工事請負費や外構工事費、まちなか交流棟へのコワーキングスペース整備、用地拡張分の土地購入費など。
 ▽市スポーツ・文化交流センター管理運営(6736万円)=運営を民間委託するための指定管理料、雑誌・図書の購入費、オープニングイベントの開催など。
 ▽ひこね燦ぱれす図書館化(1893万円)=ひこね燦ぱれすを図書館として整備するため、劣化状態の調査と事業化の検討を実施。個別施設管理計画も策定。
 ▽ごみ焼却場整備(11億9311万円)=可燃ごみの外部搬出処理委託料(2億3092万円)、焼却場長寿命化改修工事など。
 ▽大藪金田線の道路改良関連(3000万円)=新しい広域ごみ処理施設整備の建設予定地へのアクセス道路の予備設計と測量。
 ▽彦根中学校校舎増築(3億6401万円)=2023年度に教室が不足するため校舎を増築し一部を改修。増築棟用の机やいすの購入費、ICT整備費や埋蔵文化財調査費も。
 ▽除雪対策(5013万円)=市道135路線の158㌔の除雪委託、除雪機械固定経費など。
 ▽除雪作業への補助(263万円)=自治会など団体が自主的に実施する除雪作業と機械購入に助成。
 ▽グリーンスローモビリティの社会実験支援業務委託(842万円)=彦根城の世界遺産登録を見据え、城周辺の渋滞緩和のために時速20㌔未満で走行する電動車を活用したサービスのグリーンスローモビリティの実験を行う。
 ▽近江鉄道沿線地域公共交通再生(6541万円)=同再生協議会の運営費として近江鉄道の修繕や設備投資などの彦根市負担分と、鳥居本駅に設置しているトイレの水道修繕費負担。
 ▽彦根城の保存整備・維持管理(5467万円)=天守の耐震補強工事と防災設備整備の実施設計。
 ▽旧井伊神社の保存整備(919万円)=修復に向けた専門家の委員会を3回開催し、各種保存整備と維持管理をする。
 ▽彦根城世界遺産登録準備(2532万円)=新年度に提出する予定の推薦書の原案の英語版作成委託など。
 ▽彦根城周辺にポケットパーク整備(2800万円)=歩行空間の改善と回遊性の向上を目的に滋賀大学正門前の中堀沿い側の歩道にベンチや案内板を備えたポケットパークを設ける。
 ▽ひこにゃん動画のコンテンツ制作費(200万円)=ひこにゃんが登場するアニメ動画の作成に向け、キャラクターとそのストーリーを考える。
 ▽産科医確保支援事業補助金(29万円)=産科医療を支える産科医確保の取り組みを進める長浜日赤病院に、長浜市と米原市と連携しながら分べん手当として補助金を支給。
▽女性つながりサポート事業委託(300万円)=コロナ禍により不安や困難を抱える女性への支援として、ウィズを拠点に相談会やサロンの開催、生理用品配布などを行う。
 ▽ユーチューブ備品購入費(30万円)=市のコロナや防災、イベントなどの情報や会見の模様をユーチューブで配信するためのカメラやパソコン、編集ソフト。
 ▽彦根市茶の湯条例(仮称)策定経費(19万円)=井伊直弼の茶の湯の精神を市民らに広めるため同条例の制定を目指し、条例策定委員会を発足。
 ▽多言語パンフレット作成委託(700万円)=英語圏の外国人観光客向けに新たにデザインする観光パンフレットと、英語・中国語・韓国語の彦根のマップを作成し、インバウンド誘致を推進。
 ▽プレミアム食事体験の実施(120万円)=彦根城博物館で観光客向けに行う「殿様の生活体験」のうち殿様の食事代。
 ▽不登校支援(254万円)=不登校の児童生徒の支援体制を充実させるため、不登校支援連絡協議会を設置し、関係機関と連携する。またフリースクールを利用する児童生徒の保護者の負担額を助成。

2022年2月26日土曜日

びわ湖のひな人形めぐりPRで近江鉄道の電車内に装飾19日から運行開始

 雛(ひな)祭りに合わせて県内で開かれているイベント「びわ湖のひな人形めぐり」をPRするため、近江鉄道の電車内に装飾がほどこされ、19日から運行を開始した。前日には飾り付けの様子が公開された。
 近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会が電車の利用促進を目的に昨年に続いて企画。18日には彦根市や県の職員、近江鉄道の社員の計9人が古沢町の本社裏の電車区で、2両編成の900形あかね号内に桜の造花40本やぼんぼり10個、びわ湖のひな人形めぐりのPRポスターなどを設置した。
 県東部地域公共交通支援室の谷佑一郎さん(34)は「乗車した多くの方に春を感じてもらえたらうれしい」と話していた。PR電車は19日午後5時33分の彦根駅発米原行きを皮切りに3月末まで運行される予定。

豊郷町の名所で雛人形を展示とよさとひなめぐり

雛(ひな)祭りに合わせて豊郷町の名所で5日から、雛人形を展示する「とよさとひなめぐり」が開かれている。15日~は豊郷小学校旧校舎群の講堂で県内のゆるキャラたちを撮影した360度パノラマ動画がユーチューブで配信される。
 県内の長浜・東近江など8市と豊郷・愛荘など4町によるイベント「びわ湖のひな人形めぐり滋賀」の一環として開催。豊郷町では豊郷小学校旧校舎群、伊藤忠兵衛記念館、豊会館、称名寺、岡村本家を会場に3月13日まで開かれている。
 
琵琶湖八景とアニメ
東之湖さん初回作
 旧校舎群の酬徳記念館では雛人形の職人として知られる雛匠の東之湖(とうこ)さん(50)=東近江市=が、琵琶湖八景と旧校舎群を舞台にしたアニメに登場する女の子をイメージした雛人形を展示。
 琵琶湖八景の作品は今年から8年かけて計8作を仕上げる予定で、初回はマキノ町の湖中に突き出した「『暁霧』(ぎょうむ)海津大崎の岩礁」をイメージして、稲枝の職人が織った新之助上布を衣装に使用した男雛と女雛。アニメの女の子の作品は女子高生5人のバンドを5年かけて平安時代風に作る最初の作品で、ドラムを太鼓に代えて演奏する女雛に仕上げている。
 
酒蔵で「宴びな」
ゆるキャラ動画も
 岡村本家2階では滋賀県立大学のグループ「とよさと快蔵プロジェクト」のメンバー6人が創作展示「宴(うたげ)びな」を実施。酒蔵にちなんで、豊郷町観光協会から借りた雛人形と、岡村本家など旧家の古着や小道具を使い、宴席を楽しむ雛人形たちを表現した。学生たちは昨年11月末から構想を練り、今月初めまでに仕上げた。代表で環境科学部3年の今西希月さん(21)は「作品にはふきだしも入れており、楽しそうに話している姿を想像しながら見てもらえたらうれしい」と語っていた。 県内12市町のゆるキャラが一堂にそろった動画は東近江観光協会のユーチューブで観覧できる。

近江鉄道3月13日から彦根城世界遺産登録応援号の運行開始

 近江鉄道は3月13日から「彦根城世界遺産登録応援号」の運行を開始。初日の午後0時27分発で彦根駅から米原駅まで運行する臨時便の乗車希望者を募っている。
 彦根城の世界遺産登録に向けた活動を応援するため企画。特製のヘッドマークの取り付けや、応援メッセージのラッピング、つり革の装飾などをほどこした「応援号」を全線で運行する。
 臨時便の車内では彦根城に関するガイドを聞くほか、乗車の記念品や子ども向けの切符が進呈される。募集定員は小学生以下含む最大4人の10組。応募多数時は抽選。申し込みは近江鉄道のホームページの応募フォームから今月14日まで。問い合わせは同社鉄道部☎(22)3303。

びわ湖畔 味覚の宿 双葉荘プライベートサウナと露店の水風呂、露天風呂付きの客室「比良」オープン県内初

 彦根市松原町の「びわ湖畔 味覚の宿 双葉荘」は、プライベートサウナと露店の水風呂、露天風呂付きの客室「比良」をオープンした。3つが客室にそろうのは県内初だという。
 双葉荘によると、コロナ禍の影響で旅行客のニーズは「早く着いて部屋で長く過ごす」「海外や観光先でお金を使うよりも国内の少しリッチな部屋を予約する」傾向にあるという。
 県の補助事業を活用し、二部屋分を一つにし、和室、洋室、キッチンが付いた約95平方㍍の部屋に改装。屋外にはいずれも信楽焼の大きな浴槽の露天風呂と小さな浴槽の水風呂、2人まで入れるヒノキ製のサウナを設けた。露天風呂やサウナからは彦根城と琵琶湖も眺望でき、室内の巨大なガラス窓からも同様の眺めが見られる。アロマオイルや伊吹の薬草の香りも選べる。
 2食2人利用で一人4万4000円、5人まで可。料理長の片岡純一郎さん(45)は「喧騒から離れ、上質な時間を夫婦や家族、友人と過ごしていただきたい」と話している。問い合わせは双葉荘☎(22)2667。

2022年2月12日土曜日

プロサッカー選手で元日本代表の本田圭佑さん彦根市役所で市長らと面談

 プロサッカー選手で元日本代表の本田圭佑さんが1月28日、地域のスポーツ振興を目的に彦根市役所を訪問し、和田裕行市長らと面談した。
 本田さんはJリーグがない全国の自治体を訪れ、サッカーをはじめとした地域のスポーツ振興を求めるプロジェクトを展開。すでに18日に島根、20日に高知、26日に和歌山を訪れた。
彦根市への訪
問は本田さん側が今月6日に打診して実現。市長との面談は本田さん側の意向で、マスコミには冒頭の5分だけ公開された。本田さんは海外で選手として活躍しながら、地域のスポーツ格差の解消を目指す会社「Nоw Dо」(東京都)の社長を兼務しているため「日本はスポーツ格差が広がっており、特に地方は深刻なため各地を回っている」「指導者不足や親の送迎、費用の問題があり、それらを解決するには行政の努力が必要不可欠。人材流出も深刻な問題だ」と指摘した。
 
「彦根めちゃくちゃいい」
キャッスルロードや滋賀大も
 本田さんは大阪府摂津市の出身。子どものころに祖父母と彦根市内の山を登ったことを明かしながら「彦根はめちゃくちゃいい所。これだけ城下町がきれいな場所は全国でもなかなかないのでは」と場を和ませた。
 市長や市スポーツ協会の小田柿幸男会長との面談後には、市の担当課との話し合いも行われた。面談後、市長は「子どもたちに対するサッカーを中心としたスポーツ全般の取り組みについて意見交換をした。私からはJリーグに対する熱い思いを伝えた。本田選手のスポーツの普及に対する情熱を感じることができ、大変有意義な時間となった。本田△(さんカッケー)!」とコメントした。
 なお本田さんはこの日、夢京橋キャッスルロードや滋賀大学彦根キャンパスなども訪れた。

2022年2月2日水曜日

男鬼町の歴史と再興

 彦根市の鳥居本エリアの山間部には、仏生寺、笹尾、男鬼、武奈、荘厳寺、善谷、中山の7つの山村集落がある。そのうち男鬼町は標高約420㍍地点にあり、昭和40年代後半に「廃村」となって以降、これまでに滋賀県立大学などが再興に向けた活動を展開。彦根市の和田裕行市長もその活用を模索している。本紙の山田貴之記者はかつて男鬼町で過ごしていた大久保則雄さん(67)=原町=や滋賀県立大学の学生たちの活動に同行。男鬼町の歴史や再興に向けた活動内容などを紹介する。
 
明治時代初期140
領地争い直訴で処刑
男鬼という名は奈良時代の神護景雲3年(769年)、雲仙山の山下に建立された7カ所の精舎のうちの1カ所が男鬼寺と呼ばれ、男鬼町内にあったことが由来とされるほか、「かつて鬼のような男がいた」との言い伝えも残る。
江戸時代の村高が32石余りで、明治時代初期には27戸に140人が住んでいたとされ、ほかに50戸ほどの家があったとする記録が残る。
 元禄16年(1703年)には、荘厳寺との領地争いが起こり、男鬼の男衆5人が「理不尽な扱いを受けた」として直訴。当時の直訴は打ち首が原則だったため、城下町の久座の辻に5人の首がさらされたという。男鬼の村民たちは恐れてとむらいに行けなかったが、あわれんだ明照寺(平田町)が引き取り、お祀りした。現在も同寺で法要が行われている。
 
特産「男鬼ゴボウ」
木炭や養蚕も盛ん
 男鬼町では米を作っていなかったため、主産業の林業による木炭を彦根市内で売り、米や日用品を買って帰る生活だったが、昭和30年代のいわゆる燃料革命によってガスや石油が普及し、それに伴って木炭の需要が減った。昭和初期には養蚕業が盛んになり、ほぼ全戸が営んでいたとされるが、これも労働力不足と需要減で廃業した。農作物では昭和30年代前半までゴボウが栽培され、特産品の「男鬼ゴボウ」として彦根市民に親しまれていた。
 
片道2時間で通学
「少年山の家」も
 学校としては明治19年(1886年)11月1日に、男鬼と隣の武奈、明幸(みょうこう)の各村を通学区域とする武奈簡易科小学校が設立。明治24年に男鬼に分教場が開設されたが、その年の4月1日に廃止され、全村を通学区とする鳥居本尋常小学校と改称された。しかし男鬼など3地区の児童生徒向けに明治33年に明幸に武奈分教場が設置。平成2年(1990年)3月末に廃校となり、跡地に石碑が立っている。
大久保さんによると、現在は完全に廃村となった明幸の分教場まで、片道約2㌔を毎日、峠を越えて通学。降雪日は村人が踏みしめて通学路を確保したといい、通学が難しい際は寺で授業を受けたという。中学校時代には男鬼から片道約2時間かけて歩いて山を下り、現在の鳥居本中学校に通っていた。
 昭和27年に鳥居本村が彦根市と合併し、昭和30年代の燃料革命などによって、山下の鳥居本などへの移住者が続出。昭和40年代後半には居住者がいなくなり、廃村となった。解体する家もあり、現在の戸数は7軒のみとなっている。
 昭和48年から平成14年まで、旧宅が彦根市教委に期間契約で提供されて「男鬼少年山の家」が開校。市内小学生の自然体験学習の場となっていた。
 
 
イザナミノミコトの比婆神社
旧男鬼町民の氏子や信者ら世話
 男鬼町の集落には日枝神社があり、5月第2日曜日と9月第2日曜日にそれぞれ春祭りと秋祭りを営んでいた。
 そして山上には伊邪那美大神(イザナミノミコト)を祭神とする比婆神社がある。集落近くの山下の案内板によると、境内規模は4530坪(約1万5000平方㍍)。江戸時代中期の宝暦年間以前に神殿が建立され、大正時代末期に崇敬者の寄進によって「荘厳なる」社殿が再現された。現在も巨大な岩山の前に社殿が建っている。
 
かつて女人禁制
 比婆神社は長く女人禁制の地だった。武奈分教場に教員として勤務していた木下利三郎さんは長浜市石田町に昭和14年ごろから居住。比婆神社の荘厳さとご利益の多いことを地元で紹介していたとされる。御岳教金屋布教所(長浜市石田町)初代の山室(下村)うたのさんが昭和初期ごろに比婆神社を訪れて以降、女人禁制では無くなり、以降も県内外の信者たちや現在の三代・下村八重子さん(70)が世話をしてきた。
男鬼町の集落近くにある最初の大鳥居から山上の社殿までには参道があるが、徒歩だと片道40分前後かかるという。そのため信者たちの資金で約35年前に車道が約1㌔にわたって整備された。また10年ほど前の台風で社殿が倒壊したが、信者の寄進によって再建された。
 
年数回の祭り
集落内に誓玄寺
比婆神社の宮司は高宮神社の宮司が務めている。氏子総代の大久保さんら男鬼出身者(氏子)らが参加し、毎年5月第2日曜日に春祭り、9月第2日曜日に秋祭り、11月最終日曜日にしめ縄法要を実施している。
 集落内には報徳2年(1450年)建立とされる浄土真宗本願寺派の誓玄寺があるが、昭和50年代に廃寺となった。
 【参考文献=「ふるさと鳥居本」「新修彦根市史第十一巻民俗編」】
 
(別枠で)
(写真=畑の草刈りをする県立大学の学生たち)
県立大が再興プロジェクト
民家整備や畑作「里山体験施設に」
 滋賀県立大学環境科学部の芦澤竜一教授と川井操准教授の合同チームが「男鬼プロジェクト」と題し、今年5月から男鬼町の再興に向けた取り組みを進めている。
 代表で環境科学研究科3年の川畑大輝さん(23)ら学生17人が所属。昨年だけで30回、現地を訪問。拠点にしている大久保さんの旧宅の清掃と整備のほか、ジャガイモ、春菊、ゴボウ、サツマイモ、ダイコンの栽培をしてきた。
 本紙記者が訪れた際は川畑さんと、環境科学研究科1年の岡田大志(ひろし)さん(24)、環境科学部3年の澤木花音さん(22)が活動し、畑の草刈りなどをしていた。今年は建物の改修に向けた設計や部分的な改修などを行い、「カーボンゼロ」をコンセプトにしたインフラ整備についても検討する。
 将来的には5年後をめどに里山体験型の「宿泊施設」としての整備を計画している。川畑さんは「初めて男鬼町を訪れた時、良い状態で集落が残っていて、厳密には『廃村化』していないと思った。信仰なども残っており、先人たちが築いてきた集落を次世代に継承したいと思った。課題が山積みで先行きも見えませんが、一つずつ手をかけたい」と話していた。
 男鬼の活用策について、和田裕行市長は交通アクセスや家屋の老朽化、インフラの問題から「すぐに市民レジャーの活用や観光客誘致は難しいが、短期的には映画のロケ地としての活用が現実的。自治会の皆さんの意向を踏まえながら、進めたい」と説明。
 大久保さんは旧宅の維持が難しいため、解体することも考えたという。「集落には比婆神社や原風景が残っており、歴史ある村。学生や行政の皆さんには、ずっと使えるような計画の立案を期待している」と語っていた。

彦根城の世界遺産登録 7月に国内推薦か

2024年の彦根城の世界遺産登録に向けて、今年7月に国内推薦が決定する可能性があり、1992年の国の暫定一覧表に登録されて以降、ようやく現実味を帯びてきた。 
 暫定リストの掲載以降、しばらくは「放置」状態が続き、彦根市民の間でも世界遺産に対して反対の声が少なからずあり、盛り上がりも皆無に等しかった。十数年前から彦根市が登録に向けての模索を開始し、数年前から市職員を県に派遣するなど本腰を入れ始めた。並行する形で彦根商工会議所をはじめとした市内団体も機運醸成の取り組みを進め、昨年1117日には近江八幡市や東近江市、長浜市など湖東湖北5市5町の商工・観光団体で「世界遺産でつながるまちづくりコンソーシアム」を設立した。
 
幕藩体制の資産強調
 
 世界遺産に登録されるには、すでに登録済みの姫路城や、国内のほかの城郭、1000以上の世界遺産の文化財にはない「顕著な普遍的価値」を明確に示す必要がある。顕著な普遍的価値とは、どの国や地域の人でも、いつの時代のどの世代でも、性別や宗教、思想に関係なく、同じように素晴らしいと感じる価値のこと。
 彦根城は中堀から内側に外堀土塁を加えた場所が特別史跡に指定されている。そのうち中堀より内側には天守、城主の御殿、重臣屋敷、大名庭園、藩校の建物や遺構が残されている。
彦根市はこの5つの保存状態が国内のほかの城と比べて最も良いと判断。江戸幕府を主に各藩が城を政治拠点にして、近くに御殿や重臣屋敷、大名庭園、藩校などを配し、領民が安心して暮らせる仕組みの幕藩体制に着目。彦根城がこの仕組みを最もよく示す資産だと訴えている。
 登録を目指す範囲は中堀より内側の彦根城の天守、各櫓、藩主が住んでいた表御殿跡、旧藩校の弘道館跡、槻御殿、玄宮園、西郷家や木俣家など重臣屋敷、埋木舎。登録外だが、各遺産を守る範囲の緩衝地帯として、芹川、JR琵琶湖線、矢倉川、琵琶湖沖合500㍍内のエリアをあげている。
 
市民の機運醸成カギ
 
 登録のための重点事項はこれまで、「価値の証明」と「文化財の保存管理体制」だったが、近年は世界遺産を持続可能な社会を実現するための取り組みと考えるようになった。つまり文化財の保護だけでなく、「地域の発展」も重視する考え方に変わりつつあり、地域住民が世界遺産登録に向けてどれほど主体的に活動しているかも審査の対象になる。
 彦根市の街全体は保守的、排他的な市民性の「殿様文化」から脱却し始めつつあるが、彦根城の世界遺産登録に向けて、どれほどの市民が動き出すか、登録へのカギは表舞台に出ていない市民が握っていると言える。【山田貴之】

          【登録へのスケジュール】
 2022年3月 文化審議会の評価をもとに修正推薦書原案を提出
   22年7月 文化審議会が世界文化遺産候補に推薦決定
      7月 世界遺産条約関係省庁連絡会議で推薦決定
       秋 世界文化遺産への推薦を閣議決定
   23年1月 政府が推薦書をユネスコ世界遺産センターへ提出
   23年9月 ユネスコ諮問機関ICОMOS(イコモス)が現地調査
   24年5月 イコモスが世界文化遺産登録を勧告
   24年7月 世界遺産委員会で世界遺産リストへ登録決定

ホリエモンこと堀江貴文さん「地方の時代がやってくる」で講演

 ホリエモンの愛称で知られる実業家の堀江貴文さんが16日、「地方の時代がやってくる」をテーマに文化プラザで講演し、「歴史と文化、近江牛とふなずしで国内外から人を招くことができる」とアドバイスした。
 
歴史と文化 豊富
 堀江さんは「東京のおもしろい人はテレビに出てくるが、地方のおもしろい人は発見されない。しかし地方の魅力にみんなが気づき始めていて、SNSで発信され始めている」と説明。「日本は他国と比べて歴史と文化が地方に豊富にある。そして自然環境にも恵まれ、特に水に困ることはない」と話した。
 
外部コーチ招け
 地方の発信方法として、堀江さんは米国のゴルフ選手のタイガーウッズでもコーチがいることを例にあげ「自分たちではなかなか魅力に気づかない。必ず外部のコーチを付けること。まったくその地のことを知らない人がどのように思うかの視点が大切だ」と助言。「(コロナ禍で)幸いにも時間はある。その時間を活用し、魅力をどのように伝えるのかを決めてほしい」と語った。
 
ふなずしとエンタメ
 後半では「可能性だらけの地方が熱い」をテーマに和田裕行市長と対談。市長の「観光客のリピーターを増やすには食しかない」との言葉に、堀江さんは「ビーフは世界共通の言葉。日本には和牛があり、牛は勝手に人を呼ぶ」と近江牛を用いた戦略を推奨。滋賀のふなずしも取り上げ「ブルーチーズみたいで、確実に人気商品になる。ほかの地方でまねしようにもできない」と述べた。
 地方のほかの魅力として、堀江さんは「地方にはエンタメ(娯楽)があり、滋賀なら琵琶湖でマリンスポーツや釣りが楽しめる。アイアンマンレースなら世界中から人を招くことができる」と提案した。
 堀江さんの講演会は「EGplan」(芹川町)が主催し、約750人が来場した。