昨年11月に近江鉄道線の存廃と今後の方針を決めるため、県と彦愛犬を含む沿線5市5町で同協議会が設置。今年1月末から2月末にかけて、沿線住民や事業所、高校大学、近江鉄道利用者を対象にアンケート調査を実施した。
3割「通学できず」
廃止した場合
その結果、週1日以上の利用者は10代が多く、東近江、愛荘、多賀、日野の順で、月数回程度の利用者は70代が最多で東近江、豊郷、多賀、甲良の順番だった。通学で利用する高校生などのうち31・7%が「近江鉄道が使えなくなると通学できなくなる」と回答し、彦根翔西館高、水口東中、水口東高、水口高、八日市高、日野高、愛知高の順で近江鉄道線を利用。沿線の事業所では通勤の交通手段で28・3%が「近江鉄道」と答え、通勤で自動車が使えない場合は53・7%が「近江鉄道」に転換と回答した。一方で、もっと利用したくなるための改善点としては「運行本数を増やす」「運賃を下げる」「お得な割引切符」「トイレをきれいにする」の順番だった。
アンケート結果による近江鉄道線の必要性については▽通勤、通学、通院のほか、高齢者や子どもら移動弱者の移動手段として大きな役割を果たしている▽沿線事業者の従業員の重要な移動手段で、経済活動にも貢献している▽鉄道が廃止されると自動車利用が著しく増加し、慢性的な道路渋滞の発生が予想される―などと報告された。
他分野へも影響大
社長「喜び感じる」
また、近江鉄道線の存廃における公共交通分野以外の医療や商業、まちづくりなどの行政施策への負担額を比較した場合、現在の国県市町の財政支出と事業損失額が年6億7000万円の一方、廃止した場合の分野別代替費が19億1000万円以上になると公表。「存続する方か効果的」と結論付けた。
最終的には「鉄道を存続するメリットが大きく、かつ廃止するデメリットが大きい」として存続を決定。市町の首長からの異論もなかった。協議会後、近江鉄道の喜多村樹美男社長は「全線の存続を認めていただき、鉄道事業者として喜びを感じています。存続にはより一層のサービス向上が必要であり課題も多い。引き続き沿線のみなさまと協議を進めながら努力していきたい」と話した。
3回目の協議会は5月ごろの予定。今後は運営方式や各自治体の負担額などを2020年度の前半に決め、20年度中に地域公共交通網形成計画の策定を目指す。また運営方式のうち、施設の整備と運営を第三セクターと会社側とで分ける上下分離方式を採用する際は、法定協議会で継続して話し合いが行われ、鉄道事業再構築実施計画を策定していく。