彦根城世界遺産登録推進委員会が16日、市役所で開かれ、下部組織のワーキング会議からの報告として、城内や大名屋敷を「コアゾーン」とし、城下町を「バッファゾーン」にするとの意向が示された。しかし一部の委員からは「城下町の住民の機運が下がる」などの慎重意見も出た。
同会議が示したコアゾーンは、彦根城跡、城内の櫓、玄宮楽々園、馬屋、松原下屋敷、井伊家墓所など国宝、国史跡、重要文化財など10件。一方でバッファゾーンの城下町は、足軽屋敷が残る芹橋、花しょうぶ通り商店街、長曽根口など。
世界遺産への登録は年々、厳格化されており、彦根市の場合は、すでに世界遺産に登録されている姫路城との差別化を図るため、彦根城と城下町を含めた形での指定を目指してきた。
しかし同会議では、城下町などには整備中または改修の必要性がある建物が多く、また地元住民へ理解を求めることを含めて長期になると判断。まずは城内など主要部分と城下町とを区分して登録を目指す形式に変更した。
同委員会では「城下町を外すと姫路城との差別化ができないのでは」、「地元住民の関心が薄れるのでは」などの声が相次いだほか、中堀をコアゾーンに入れるべきとする意見もあったが、最終的には了承された。市は「彦根城と城下町が一帯であることに変わりはない」と理解を求めている。
このほか、16日の彦根城世界遺産登録推進委員会では、バッファゾーンの城下町内で重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)の指定を目指している花しょうぶ通り商店街で、昭和15年に作られた都市計画が伝建地区指定のネックになっていることがわかった。
市の都市計画によると、同商店街の一角から佐和山小前に整備中の道までと、その道から京町方面の彦根・近江八幡線までの総距離約1㌔。
伝建地区は同商店街一帯が指定予定エリアだが、都市計画の一部にも含まれており、指定のためには都市計画を変更するか、白紙に戻すしかない。しかし、地元合意のもとで決まった都市計画を覆すことは、外部調査や地元への説明などで一般的に3年はかかるといい、その間、同商店街は伝建地区に指定されないことになる。
市教委文化財課の谷口徹部長は「部分的に変更ができるのかなどを含めて良い方向性を検討していきたい」と話している。