昨年末の講座ではNPO法人気候ネットワーク(京都市)の主任研究員・豊田陽介さん(40)が「再生可能エネルギーと市民共同発電」をテーマに基調講演した=写真。
豊田さんは、2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めた「パリ協定」が昨年11月4日に発効されたことを取り上げた上で「世界各国は石油や石炭、天然ガスなど温暖化につながる燃料を使わない社会を目指すことで合意した。風力や水力、太陽光、バイオマス、地熱など再生可能エネルギーの導入が進んでいくだろう」と予想。
事業活動で消費する電力を再生可能エネルギーでまかなっている企業として、米国大手のグーグルやマイクロソフト、ナイキ、コカコーラ、スターバックス、BMWなどのほか、日本のリコーや積水ハウスなどをあげ「名だたる国内外の企業が再生可能エネルギー100%を目指すと宣言している」と述べた。
一方、日本全体で再生可能エネルギーが伸びない原因として「地球温暖化に影響を及ぼす温室効果ガス排出型の社会のため、経済成長と共に二酸化炭素が増えている。経済成長と二酸化炭素の排出量が一体のため減らせないという考えが根強くある」と解説。
この考え方からの脱却に向けて、豊田さんは経済成長を維持しながら温室効果ガスを排出するエネルギーを削減していく「デカップリング」の社会を提示。中国やインド、ブラジルなど新興国でバイオマスエネルギーの導入が進むことを示して「雇用が生まれており、経済的なメリットもあり、産業界にプラスになる」と、日本での再生可能エネルギーの更なる推進を求めた。またWWF(世界自然保護基金)が2050年までに世界の全てのエネルギーを再生可能エネルギーにすると掲げていることを紹介し「再生可能エネルギー100%は夢物語ではなくて、世界中の技術を組み合わせれば達成できる」と訴えた。
再生可能エネルギーを増やす方法として、市民の出資や寄付を財源に地域の水や森、風を活用する「市民共同発電」をあげ「地域の資源を使って電気を作り、収益を生んで地方を豊かにしていくというモデルを目指すべきではないか」と提唱。「地域で発電をしていけば、風力の『ブンブン』という騒音が、お金の音の「チャリンチャリン」に聞こえるのでは」との表現を使いながら、市民共同発電の推進を求めた。
豊田さんは市民共同発電所が昨年12月時点で全国で1028基あるとした上で、市民共同発電を推進させる方法として「まずはどのような地域にしたいのかコンセプトを持ち、住民主体で進めていく考え方が重要。再生可能エネルギー社会を実現させることで、地域の課題や問題を解決していくという状況をつくれたら良い」とアドバイスした。
再生可能エネルギー講座は「環人8プラス」と「ひこね市民発電」が主催して開講。
環人8プラスは県立大による平成23年の近江環人を受講した8期生の社会人4人と市民有志6人が、再生可能エネルギーの普及を目的に結成したグループ。
ひこね市民発電は代表の松宮秀典さん(57)=古沢町=と伊藤容子さん(55)=大藪町=で組織。現在は市内に2カ所の市民共同発電所があるが、まだまだ認知不足な状況のため、松宮さんは「この1年間勉強し、彦根で再生可能エネルギーを作るシステムを広めていくために、皆さんと一緒に考えるきっかけ作りをしたい」と、講座への参加を求めている。
問い合わせは松宮さん☎090(1488)6026。
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