山口さんは18歳からパナソニック彦根工場で技術者として勤務し、ドライヤーやシェーバーの小型モーターなどを作り、長年の仕事の中で板金などの加工技術を習得した。55歳の時に「定年後は何をしようか」と考えていたころ、野洲市内で兜作りを趣味でしている男性がいるのを知り「虫が騒いだ」という。
以降、山口さんは男性の元に3回通って、作っている場面を見て学び、58歳のころから仕事の延長戦として兜作りを始めた。定年後は本格的な製作に入り、自宅の玄関に設けた手作りの工房で、ハンマーやペンチなどで厚さ0・8㍉の鉄板を加工。
戦国武将の甲冑を紹介した雑誌を参考にしたり、実際に展示品を見に行ったりして、本物そっくりに仕上げている。これまでに井伊直政、石田三成の彦根ゆかりのほか、豊臣秀吉、伊達政宗、真田幸村、明智光秀、黒田官兵衛ら著名な武将のかぶとを作ってきた。
井伊家当主の天衝きや橘の家紋を着けた型、三成の大一大万大吉の家紋を備えた作品のほか、秀吉から家臣に伝わった放射状の形、加藤清正が着用したとされる長烏帽子型、実際の鹿の角を利用した幸村の着用品など独特な兜も作っている。わざとさびをつけて趣深く仕上げた作品もある。
兜作りの魅力について、山口さんは「同じ武将の兜を作っても、さびの具合など一つ一つ違う雰囲気になります。作り方によって、どの工具を使うべきか考えるのも面白い。頭と手をフル回転するので認知症予防にもなります」と笑顔を見せていた。
1作品を完成させるのには2~4カ月間かかる。オーダーメイドの注文も受け付けている。今後作りたい兜として、山口さんは徳川家康の兜をあげ「特に徳川の家紋にこだわって、オリジナルの作り方で作りたい」と意気込みを語っていた。
兜のほか、灯ろうも作っている。米原市と長浜市では教室を開いている。問い合わせは山口さん☎090(8934)8685。
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