湖東焼は文政12年(1829)に、古着商を営んでいた絹屋半兵衛が彦根で始めた焼き物。天保13年(1842)に彦根藩が窯を召し上げて、井伊家十三代・直弼の時代に黄金期を迎えたが、桜田門外の変後は縮小。文久2年(1862)には民間へ移行し、佐和山のふもとで生産されていたが、明治28年(1895)に廃窯となり、その歴史に幕を閉じた。
種類は藩の内外で取り引きされた日用品から、藩主の愛用品・贈答品として用いられた高級品までさまざま。その中で磁器に赤色で絵付けし、金色で彩色した赤絵金彩の作品は華やかで、その絵付け師としては鳴鳳や幸斎、自然斎、床山などが知られる。
特に鳴鳳は元々、京都のてんぷう院という寺の寺侍だったが、直弼時代の嘉永年間(1848~54)の終わり頃に客分として迎えられ、安政年間(1854~60)の初めごろまでの数年間、湖東焼の絵付けをした。緻密な筆づかいや洗練されたデザインで、気品あふれる作風が特徴。井伊家伝来の鳴鳳作品は40点あまりだが、大正12年(1923)の関東大震災ですべて被災した。
テーマ展では被災し、黒ずみが残る作品もある鳴鳳作の湖東焼40点を展示。主な作品は、硯(すずり)の近くに立ててほこりを防ぐために用いる衝立形の道具「円文散硯屏(えんもんちらしけんびょう)」、茶碗を清めるために水を入れておく茶道用の器「芦雁図水指(ろがんずみずさし)」、すり鉢型の胴と大きな高台が特徴の「羅漢雲鶴文(らかんうんかく)茶碗」。
開館は午前8時半~午後5時、1月28日まで。
井伊直亮時代の湖東焼
彦根市本町1丁目のたねや美濠(みほり)美術館は来年1月22日まで湖東焼展を開いている。
平成15年9月の開館以来、所蔵している湖東焼展を開催。今年9月27日からの「秋から迎春の器」展では48点を展示。そのうち、井伊家十二代・直亮時代に作られたという「染付青海波紋吹上龍口(そめつけせいがいはもんふきあげりゅうぐち)浄水瓶」は器の下から立体的な龍が頭を突き出し、龍の口から水が出るようになっている。寺尾市四郎が作り、庄介という職人が龍の細工をしたとされる。
入館料は中学生以上500円、小学生以下無料。開館は午前10時~午後5時。不定休。問い合わせは同館☎(24)5511。
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