近江上布は、大麻を原料とする高宮上布と違い、苧麻(ちょま=カラムシ)が原料。湖東地方で室町時代から生産され、江戸時代には彦根藩の手厚い保護を受け、近江商人により全国に流通した。しかし大正時代から衰退傾向に入り、昭和に入ると生産量も激減。現在、近江上布の伝統工芸品を生産する店舗は大西新之助商店を含め2店のみ。
大西さんは、彦根工業高卒業後、アルバイトをしながら夜間大学に通学。印刷インキ製造会社を経て、平成2年に先代の跡を継いで大西新之助商店に改名。同5年に伝統工芸士に認定された。
魚など絵模様を織り込んだ「型紙捺(なつ)染」という技法を採用。製品の魅力について、大西さんは「どこが優れているのかは着る人の価値判断。私からはおこがましくていえない」「やる(作る)人がいなくなったから珍しいだけ」と謙虚な姿勢を貫き通す。
繊維を含めた流通業界にもふれ、「今は売る側が巨大になりすぎて、作る側が売る側の言うことを聞かなければならなくなった」「そんな世の中はおかしい。作った人間が勝つようにしなければ、良い作り手も育たない」と指摘した。
同店はほとんどがオーダーメイドで制作には1カ月前後かかる。ハンカチや名刺入れ、エコバック、ケータイケースなど小物も扱う。問い合わせはホームページ(http://shinno-suke.com/)か同店℡0749(43)4434へ。
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