さて、国の借金が今年度末には1000兆円を超えると言われ、日本国債が相次いで格下げされる中、消費増税を巡る論議がかまびすしいが、我が国の将来を考えた場合、消費増税よりも重要な案件として少子化対策があげられよう。
人口が多ければ、それに比例して国が発展していくという単純な話ではないが、年金・医療を含む社会保障制度や経済力または国際力などを維持または成長させるには、人材(人財)が欠かせないのは言わずもがなであり、そのためにも少子化対策は喫緊の課題である。
にもかかわらず、政権交代以降、少子化対策担当大臣は9人目となっていることから勘ぐると、民主党は少子化対策を(かなり高い確率で次の衆院選後に交代する)次の政権まで、なおざりにするようで残念極まりない。以下、我が国に置かれた少子化の現状とその原因を紹介する。
一人の女性が生涯に産む子どもの平均数の推計値・合計特殊出生率は、終戦後の第一次ベビーブーム時には4を超えていたが、その後は低下していき、1974年以降は人口の維持に必要な「人口置換水準」(2・07)を下回り、2005年には1・26まで落ち込んだ。
その後、団塊ジュニア世代にあたる30歳代後半の「駆け込み出産」により上昇し、10年は前年度比0・02ポイント増の1・39となっている。ただ、出生率の上昇原因は国の少子化対策が起因しているわけではないため、いずれ低下することは容易に予想できる。
また、国立社会保障・人口問題研究所の調査(2010年)によると、30~34歳の未婚率は男性が47%、女性が35%で、30年前と比べると男性は2倍以上、女性は3倍以上となっており、非婚または晩婚化が進んでいる。つまり、結婚できない男女が増えている上、結婚しても生まれる子どもの数が少ないという「悪循環」の流れにある。
社会保障の面から見ても、1960年の時は15~64歳の勤労世代の11・25人で一人の高齢者(65歳以上)を支えていたが、2010年には2・85人で一人という数値になっており、30年には1・7人に一人というのが確実視されている。
一般的に指摘されている少子化の原因としては、▽女性の社会進出▽男は仕事、女は家庭という考えが根強く残っている▽夫の子育て支援(イクメン)が足りない▽子どもを育てる経済力がない―などがあるほか、小生は「草食男子」など男が頼りなくなったことも一因にあると考えている。
消費増税の賛否の論議も重要だが、更なる長期的視点で見た場合、少子化対策こそが最重要議題であり、国が頼りないのなら、地方でやるしかない。親子が安心して外出できる環境や、男女が仕事と子育てを両立できる仕組みを整備するなど、各地方自治体が独自の少子化対策を立案する必要がある。つまり、少子化対策は地方分権を進める上で最初の政策になり得るともいえるのではないか。【山田貴之】
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